【Cinema Holiday】 さあ、来年はボーリング三昧だ! | |
=まずは見てから嫌いになろう『ビッグ・リボウスキ』= | 1998/12/29 |
(1998年アメリカ作品、監督:ジョエル・コーエン、出演:ジェフ・ブリッジズ、ジョン・グッドマン、スティーブ・ブシェーミ)
あなたがある映画を見たとする。そしてその映画がダメだという感想だった場合、具体的にはどういう理由になるのだろうか? 退屈、眠たい、難しい、メリハリがない、騒がしいだけ、芸術ぶってる、共感できない、とか色々あるだろけど、「鼻につく」という理由はないだろうか?
面白いんだけど、製作者のインテリ臭さなんかが前面に出過ぎていて、それが妙に鼻についてイラつく。小さな世界でインテリゲンチャが自分勝手に遊んでいるのが、スクリーンの裏に見えてしまって興ざめする。そんな映画もかなりあるような気がする。アカデミーをゲットした『ファーゴ』以来の待望の新作『ビッグ・リボウスキ』を贈り出してきたコーエン兄弟には、特にそういうイメージを持っている人が多いと思う。膨大な過去の映画データの蓄積を生かした演出と、漂ってくる「僕たちセンスいいんだよ」というスノッブさが気に食わないから、コーエン兄弟の作品は見ない、という人は実際かなりの数いるらしい。
製作イーサン・コーエン、監督ジョエル・コーエン、そして共同脚本というこの兄弟チームは、好きな人はとことん好き、嫌いな人は名前を聞くだけでイヤ、という存在だろう。僕はこういう性格なんで(?)前者なんですが…… でも、全く余計なお世話だが、それって逆差別に近い待遇じゃないだろうか? 面白い映画は面白いのだ。見て面白くなかったらそれでいいけど、見る前から「なんかアイツらインテリ振っててヤダな」的な理由で映画を見ないのは凄く勿体無い。コーエン兄弟も、多分実際には気取った嫌な奴らなんだろうけど(根拠なし……)、作った映画が良かったらそれでいいんじゃないのかなぁ?
この『ビッグ・リボウスキ』も、これまでのコーエン作品と同じく、一筋二筋三筋縄くらいでも未だどうにもならん凝りまくった脚本を、これまた凝りまくった映像で展開させていく。主人公は、元ヒッピーで現プータローの中年親父と、二言目には「俺はベトナムでは……」と説教しだすハード・ボイルドな現プータローの二人。こいつらはブラブラと殆ど仕事もせずに、好きなボーリングに膨大な時間を費やす毎日。二人ともみっともないくらいデブッていて、明日への展望も将来への野望のカケラもない。ところが、元ヒッピーの本名リボウスキと同姓の富豪の若妻が誘拐されたことから、二人は事件に巻き込まれ、というか進んで首を突っ込んでいき、やがて謎のドイツ人軍団や前衛芸術家も登場して、話はヒッチャカメッチャカに展開する。
先の読めないストーリーに加えて、大した意味もないのに画面の隅までキッチュに彩ったボーリング場のシーン、突然登場するムサいオッサンの浮遊的ミュージカル・シーンなど、やはりこの作品でも、コーエン兄弟の持ち味は満載である。僕の右隣にいたオジサンは爆笑したり、いちいち頷いたりと完全にハマッていたが、左隣の兄ちゃんは爆睡していた。コーエン兄弟の作る映画は、毎作ごとに表面上の作風がガラリと変わるが、基本はやっぱりそういうアクの強い作品なのだ。やっぱ、嫌いな人は嫌いだろうな……
まあ、とりあえず僕は大好きです、この映画もコーエン兄弟も。あと、前作『ファーゴ』では「変な顔の男」で大活躍していたスティーブ・ブシェーミが、今回は気の弱いテンポずれのお人好しボーラーとして、相変わらずいい味出してます。この人も大好きです。