【Scrap Holiday】  横浜スタジアムへの道のりは、遠く、そして曲がりくねっていた
      =0.38世紀ぶり優勝記念、極私的ドタバタ長編日記=    

1998/11/8

【10月8日(木)】

series_champ2.gif (33119 バイト)  前日に2位中日が敗れて、ついに、とうとうマジック1。38年前と同じ甲子園での胴上げとなるのか? ヤクルト戦3連敗の時の心配は綺麗に何処かへ消えてしまっている安心モードの胸の内、職場でも6時になるのが待ち遠しい気分である。

  6時、勤務時間終了。今日ばかりは速攻で職場を後にする。早速ラジオのイヤホンを耳に差すが、家に帰りつくには、まず地下鉄に乗らねばならない。約15分間、もどかしい気持ちでディスクマンを聴く。

  JRの駅に到着し、再度ラジオ中継に切り替える。2-1で阪神がリードしている。家に帰った時には、双方1点づつ追加して、3−2でやはり阪神リード。

  7時過ぎから食い入るようにテレビ観戦に入る。試合は膠着状態のまま7回裏が終了。やはり神様は明後日からの地元胴上げを指令しているのかと思い始めた8回表、進藤が起死回生の逆転タイムリーを放つ。そして、8回裏から佐々木が投入される。もう大丈夫だ。

  8時50分、阪神最後のバッター新庄が空振り三振。マウンド上で抱き合う選手達、ベンチで感激の余り頭を抱え込む権藤監督。そして僕は…… ただ阿呆のように口をあけて画面を見つめていた。

  38年ぶりの優勝だが、僕にとってはファンになってから27年目の初優勝だった。ホントにオオゲサでなく、生きている間にこんな日がくるなんて思っていなかった。だから『その瞬間』を想像することも出来なかったし、実際『その瞬間』になっても、騒ぐわけでもなく、泣くわけでもなく、ただ呆然としていた。

  しかし、30分後、風呂に入った時、僕は思わず拳を突き上げ叫んでいた。
  「とうとうやったぁ!!!!!!!」

  10時のニュース・ステーションを皮切りに、スポーツニュースのハシゴが始まる。ビデオデッキ3台を駆使して、ほぼ全ての攻略に成功する。さすがに疲れた。

【10月9日(金)】

  高揚した寝不足気分のまま職場に向かう。手に持つカバンは普段と違う大きめのもの。当然、全スポーツ紙を購入輸送するためである。

  駅に着く。何と全紙売り切れ、なんてことは当然あるはずもなく、無事一気に全5紙をゲットする。阪神が優勝した時は6時にはすっかり売り切れていたらしいが、さすがは我が愛すべき大阪である。今日は8時前でも山のように積まれている。まあ、あなた方は野村監督の一言にいちいち過剰反応しといてください。

  さて、肝心の日本シリーズチケット情報である。前情報では、ぴあやセゾンでの店頭発売があるように聞いていたが、今日の新聞に載っている発売要綱によると、横浜スタジアム以外では電話予約のみらしい。発売日は14日(水)とのこと。ただひたすら電話しまくるしかあるまい。

  予定では、17日(土)の第1戦と翌18日(日)の第2戦を横浜まで見に行くつもりである。とりあえず、17日(土)のホテルを予約しておくことにするが、どこのホテルも満員で中々取れない。結局、ニフティのホテル予約サービスで何とかキープする。

  今日は適当に残業する。そして帰りに職場にある一般紙を全て持ち帰ったことは言うまでもない。

  夜はスカパーでの対中日戦を余裕シャクシャクで鑑賞する。試合終了後、リーグ優勝セレモニーがあり、ビクトリー・フラッグの授与が行われる。『Get The Flag』から『Got The Flag』へ。ああ、本当にホンマに優勝したんやなぁ、という実感がジワリと湧いてくる。

【10月10日(土)〜10月13日(火)】

  両リーグとも消化試合が続き、西武・横浜はシリーズ用の調整を着々と行う。一方、僕は次々に発売される各雑誌の優勝記念増刊号を入手するのに忙しい毎日である。しかし、いつも優勝が決まった後でこんなに増刊号が出ていただろうか? 去年までは気にしたこともなかったので確実なことは分からないが、多分、あの阪神優勝の時以来だろうなぁ。それだけ歴史的事件ということなのだろう、阪神の21年ぶりを大きく更新する38年ぶりなんだから。

  13日(火)には、西武ドーム球場で行われる第3、4、5戦のチケットが売り出される。こちらは西武電鉄の一部の駅でも発売され、割と容易に入手できたらしい。ちなみに、ひやかしで夜にローソン・チケットへ電話してみたら、まだ十分席は残っていた。

【10月14日(水)】

  いよいよ横浜スタジアムの第1、2、6、7戦のチケット発売日である。朝のテレビニュースによると、唯一の窓口発売となる横浜スタジアムには、すでに数千人規模での行列が並んでおり、西武ドーム球場の時とは比較にならない熱気だということである。

  10時、電話予約開始時間になる。チケットぴあ、チケットセゾン、ローソン・チケットに順繰りに電話をかけまくるが全く通じない。まあ、1時間は最初から覚悟している。

  しかし、11時になっても12時になっても一向に電話は通じない。次第に焦ってくる。無理矢理取った休暇は午前中のみ。もう職場に行かなくてはならない。

  仕方なく職場へ向かうことにする。電車の中でも、歩いている最中もひたすら携帯のボタンを押し続けるが、返ってくるのは「ただいま大変混雑しております」というNTTのメッセージのみ。

  職場に着いてからも、携帯でコソコソと電話し続ける。そして、1時半、ついにローソン・チケットにつながるが、「ローソンチケット販売分は完売いたしました」という録音テープ。一気に体中の力が抜ける。

  やがて、ぴあとセゾンにも電話が通じるが、やはり完売だった。3万人*4戦=12万枚のチケットがわずか4時間で売り切れるとは、全く予想の範囲外であった。38年ぶりとは、かくのごとく大変なことなのである。

  夜、ホテルを泣く泣くキャンセルする。

【10月15日(木)】

  しつこいようだが、諦めきれずに、もう一度それぞれのチケット業者に電話をしてみる。

  ぴあ「完売いたしました」
  ローソン「完売いたしました」
  セゾン「完売いたしました。ただし……」
  た・だ・し?
 「ただし、予約を受け付けましたチケットのうち第6、7戦分の引き換え期限が19日(月)になっておりまして、キャンセルが出た場合、20日(火)に店頭でのみ追加発売をいたします」

 うーーむ、そういう仕組みになっていたのか……

  更にしつこいようだが、ぴあとローソンにキャンセルチケットの発売について、もう一度確認する。両者とも発売の予定はないとのこと。これで最後の勝負は20日(火)のセゾンのみと決まった。

  シリーズもまだ始まっていないのに、ここまででかなり疲れている。

【10月16日(金)】

  いよいよ明日からシリーズである。だが、台風の影響で今日から明日にかけては全国的に雨模様との予報。もし第1戦のチケットが取れていたら、大雨でずぶ濡れになって観戦してた可能性もあった訳で、そう考えると何とも複雑な心境である。

  スポーツ新聞などの情報によると、佐々木が風邪を引いて点滴を受けているらしい。不吉なニュースである。一説ではリーグ優勝の時のビールかけのビールが冷えすぎていたとか何とか。シャレにならん話である。

【10月17日(土)】

  昼前からニュースに横浜スタジアムの様子が映りだす。ファンは大いに盛り上がっているが、空模様はすっかり盛り下がっている。

  そして4時前、本日試合中止の決定が下る。残念だが仕方がない。佐々木の体調を考えると、これも天の恵みなのかもしれない。

【10月18日(日)】

  昨日の大雨から台風一過の秋晴れとなった。試合は確実にあるようだ。今日は外出を控え、ひたすら試合開始を待つことにする。

  またまたしつこいようだが、昼過ぎに再度ぴあとセゾンにキャンセルチケット発売の確認電話をかけることにする。こういうイレギュラーな発売は、平気でコロコロと日が変わったりするのだ。

  セゾンはやはり明後日の20日(火)発売。ただし、前日の時間一杯まで予約分の引き換えを行うため、実際にキャンセルチケットが出るかどうかは、火曜日の10時にならないと分からないとのこと。無駄足覚悟で並ぶしかあるまい。

  次にぴあへ電話する。すると、何とこちらでも第6、7戦のキャンセルチケットの発売があるというではないか! 前に電話した時は予定なしって言ってたのにぃ。全くいい加減と言おうか、柔軟性があると言おうか……

  で、その発売日は、何故かセゾンの一日前の明日19日(月)。チャンスが2倍に増えたとも考えられるが、こっちはサラリーマンなんである。そうバカバカと休む訳には……

  などと思いながら、とりあえずホテルの予約だけはしておく。雨で一日ずれたため、第6戦は25日(日)、第7戦は26日(月)となった。果たして仕事は休めるのだろうか、という最大の問題は適当に棚上げしつつ、各ホテルに電話しまくるが、横浜国体の開催時期にぶつかっていて、どこも満室との返事ばかり。10件以上電話して、やっとこさ、25日(日)、26日(月)と別々のホテルをキープする。どっと疲れる。

  6時40分、第1戦がスタート。やることなすことうまくいって、9−4で横浜の圧勝に終わる。またしてもスポーツニュースのハシゴ。ただ、駒田に元気がないのが少し気になる。

【10月19日(月)】

  朝8時にチケットぴあに到着する。そこには幻のチケットを求める在阪ベイスターズファンの長蛇の列、なんてことはなく、掃除のオバチャンが忙しくモップを動かしているだけだった。

  結局10時まで誰も並びにはこず、開店と同時に店に一人でなだれこむ。こういう時には、申込用紙を記入している30秒が生死を分けることになるので、あらかじめ家で記入しておいた用紙をすかさず店員さんの目の前に突き付ける。

  カチャカチャと端末をたたく店員さん。
  「第7戦だけでしたらお取りできますが」
  やったぁ!!
  「お願いしますぅっ!」
  内野席一塁側、場所も最高である。やはり天は我の許にあったのだ。

  しかし、第6戦が駄目だったのは悔しかった。ひょっとしたら、セゾンの発売日も今日に変わっているかもしれないと思い、地下鉄に飛び乗ってセゾンカウンターに行くも、予定通り明日の10時とのことだった。まあ良しとしよう。

  ところが、というのも可笑しいが、第2戦も投打がバッチリ噛み合って、4−0の横浜連勝。この勢いでは、第6、7戦まで行かずに決着がついてしまうかもしれない。贅沢な悩みではある。

【10月20日(火)】

  ともかく、朝はきちんと出勤する。セゾンの発売は10時だから、9時半に職場を抜けて10時半に戻るという裏技を使う。裏技といっても、別にエスケイプしているのではない。うちの会社には時間休暇制度というのがあって、1時間単位で休暇を取得できるのである。ただ、普通は9時からの数時間か、定時の6時の数時間前から使うものであって、いわゆる『中抜け』として使う例は殆どない。しかぁしぃ、今日この『中抜け』を使わずしていつ使う機会があろうか? 

  そんなこんなで、10時にセゾンのカウンターへ突入。申込用紙には『日本シリーズ第6戦、10月24日(土)、ただし第1戦雨天順延のため25日(日)に延期』と馬鹿丁寧に記入する。

  そしてカウンターのお姉さんが端末を操作。
  「はい、ご用意できますが」
  またしても、やったぁ!!
  「お願いしますぅっ!」
  今度の場所は内野席三塁側の西武サイドであるが、この際そんなことは言ってられない。ゲットゲット!!

  ガチャガチャ、チケットが発券される。ところが、チケットには『第7戦』と書いてある。ええっ?

  ここで、日本シリーズのチケット発売方法について説明しておこう。シリーズでは、公式戦とは違って、チケットは日付ではなく第何戦であるかによって管理される。すなわち、『10月17日のチケット』ではなく『第1戦のチケット』として発売されるのである。従って、雨天順延の際は、何日ずれこもうがそのまま有効に使用することが可能であり、反面、順延された日に個人的事情で行けなくなったとしても、払い戻しには応じてくれない。

  要するに、セゾンのお姉さんはこのシステムを知らないままに、『10月25日(日)』という順延前の日付で端末を叩いたため、元々この日に開催予定だった第7戦のチケットが発券されてしまったという訳である。

  だから、あんなに細かく間違えようのないように申込用紙を書いたのに、全く……である。で、第6戦はというと、果たして売り切れ。あーあー、ぬか喜びかぁ。

  骨の髄まで疲れきって、10時半に職場に帰着。昼休みに第6戦の日のホテルのキャンセル電話をかける。結局チケットを取れたのは第7戦だけとなり、横浜へ乗り込む可能性は限りなく低くなる。

【10月21日(水)】

  今日は西武ドーム球場へ戦いの場を移しての第3戦。定時に帰宅するために、早朝出勤をし、昼休みも惜しんで仕事をする。はっきり言って仕事が忙しいんである。かなり無理をしてる最近の僕である。

   さあ、5時半だ、あと30分だと思った時に、ふと覗いたインターネット速報には『雨天中止』の文字。またかよぉぉ。

  これでチケットをとっている第7戦は28日(水)に延期となった。ホテルの予約がまたしても無駄となり、またまたキャンセルの破目に。

  家に帰って、27日(火)のホテルのキャンセルをし、翌28日(水)の予約に切り替えようとしたところに、またしても仰天情報が入ってきた。度重なる雨天順延のため、運営委員会が第5戦と第6戦の間の移動日をなくす方向で検討中とのことである。

  日本シリーズというのは、2戦やって1日移動日、次の3戦やってまた1日移動日、最後に2戦の合計7戦、というスケジュールで行われる。たとえ雨で中止になったとしても、移動日を含めてそっくり後ろへずれるだけのことなのである。少なくとも、今まではそうだった。

  ところが、運営委員会は、タイトルホルダー表彰式などの『背広行事』がシリーズ後に詰まっていることを理由に、移動日の削除を匂わしたのだ。

  これに猛反発したのが横浜の権藤監督。
  「日本一を決めるシリーズと表彰式のどちらが大事だと言うのか? 全く本末転倒で場当たりも甚だしい。第一、雨で2日くらい延びた場合のことも想定せずに、始まってから適当に考えるとはどういう了見か? 見識を疑う」
  とえらい剣幕でまくし立てた(らしい)。そりゃあそうだろう。ただでさえ短期決戦でデリケートなシリーズ、ピッチャーのローテーションの重要性は言うまでもなく、移動日があるとないとでは、作戦の立て方が180度どころか1800度くらい変わるんである。しかも、決定ではなく検討中であるという。このいい加減さは一体何なのだろうか?

  権藤監督の怒りは怒りとして(しかし西武の東尾監督が何も言わなかったというのは、何も考えていない証拠なんだろうか?)、こちらとしては第7戦の日が決まらないので、ホテルの予約が出来ないのだ。どうしてくれるんですか連盟さん?

  ともかく(こればっかだな)、27日(火)のキャンセル手続きのみ行い、再予約は明日以降の動向に依ることとした。

【10月22日(木)】

  例によって、電車の中で序盤戦の攻防を聴くが、今日は全く駄目である。先発の三浦が四球四球のボロボロで、試合になってない。

  帰宅後のテレビ観戦でも状況は好転せず、結局2−7の完敗。第7戦開催の目が少し出てくる。

【10月23日(金)】

  例の移動日削除案については、運営委員会が権藤監督の猛反発に驚いて、とりあえずは引っ込めたらしい。ただし、あと1試合でも中止になったら再検討するとのこと。懲りないヤツラである。

  まあ、とにかく3回目のホテル予約をする。今度は国体も終わった時期のウィークデイのため、容易に予約完了。

  さて第4戦である。昨日ボコボコにやられて負けたので、かなり嫌な気分だが、先発が第1戦で好投した野村ということで、少々安心する。電車ラジオ中にいきなり中島に2ランを打たれる。気分転換のため、ラジオ局を変えてみると、野村は立ち直り、鈴木の同点2ランが飛び出す。

  しかし、その後、打線は石井の前に抑えられ、野村は10回に1回しかバットにボールが当たらないマルティネスに場外ホームランを打たれて2−4で連敗してしまう。

  雰囲気は最悪になるが、これで第7戦の観戦確率が更に高くなるとは、何とも皮肉な状況である。

【10月24日(土)】

  関東地方はまた雨が降っているようだ。今日中止になると、移動日がなくなって、いややっぱり移動日はあるのかもしれないし、そうなるとこっちのホテル予約はどうなるのか、大体第7戦が29日(木)になると、仕事を休めない可能性が大きいし……ああ、もう疲れるばっかである。

  大体、今日の第5戦にどっちが勝とうが3勝2敗になって、最低でも第6戦までは行くのである。となると、第7戦があるかどうかは第6戦の試合終了時でないと分からない。要は、前の日の10時か11時になって初めて第7戦の開催が決定するのである。ホテルは? 仕事は? どうすればいいのだ? 

  もっと最悪なのは、第7戦があると決まって、いざ横浜に行って、また雨が降った場合。2日も休めるかよぉ、仕事。って言っても、そうなったら絶対休むけど。

  そんなこんなをモゴモゴと考えているうちに始まった第5戦。今日は連敗の重苦しい雰囲気からガラリと変わって打つわ打つわ……終わってみれば、日本シリーズ新記録の20安打で、17−5の完全ノックアウト勝ち。これで3勝2敗、ついに38年ぶり(しかしこの言葉呪文みたいだな)の日本一へ王手を賭けた。もう、第7戦をナマで見たいなんてワガママ言いませんから、どうかこのまま第6戦で決めてください。もう心の臓まで疲れました、ワタシ。

【10月25日(日)】

  今日は日本全国秋晴れ。運営委員会は、こんな日曜日にさぞかし試合をやりたかっただろうが、そうは問屋がおろさない。移動日は移動日である。今日が休みだからこそ、横浜も西武も明日にいいピッチャーを用意できるのだ。もし今日やってれば、二線級ピッチャーのオンパレードで、レベルの低い試合となったことだろう。

  夕方、ホテルに電話を入れる。前日いっぱいのうちに電話を入れれば、キャンセル料はいらないらしい。さあ、ベイ戦士のみなさん、僕に歓喜のキャンセル・テレフォンを掛けさせてください。

  思えば、今年は6月頃から、生活のリズムがベイスターズを中心に回っていた気がする。まさかの期待が、もしかしての期待に変わり、必ずやという期待に変わっていくに従って、映画や音楽などの他の趣味が後ろへ引っ込んで、毎日がベイスターズに彩られていくようになった。

  まだチームが大洋ホエールズと名乗り、オンボロの川崎球場を本拠地にしていた時からひたすら見つめ続けて27年。まあ、ハレー彗星みたいなもんである。もう来年からしばらく沈んでてもいいから、明日は勝ってくれ!! この半年の最後を綺麗に閉じてくれ!!

【10月26日(月)】

  明日の職場放棄に備えて、仕事を猛烈にかつ密かに処理する。10時頃、明日の緊急会議の予定が入る。時間は午前10時。これなら昼過ぎの新幹線に乗れば試合には間に合う。しかし、会議が昼からだったら、僕はどういう反応をしたのだろうか?

  6時のチャイムが鳴るか鳴らないかのうちに、職場を猛スピードで脱出する。今日は斉藤隆・西口の両エースの先発。中々の投手戦のようだ。ラジオを聴いていても、スタジアムの息詰まるような雰囲気が伝わってくる。

  7時頃帰宅し、テレビ観戦に移る。投げ合いは続き、どちらかと言えば西武が押し気味である。しかし、ついに、8回裏駒田の大二塁打で2点を先取する。後は佐々木の登板である。もう99%決まったも同然だ。歓喜のキャンセル・テレフォンまであと数十分。

  しかし、予想に反して9回表、西武の反撃が始まる。1点差に迫ってなお、一死一二塁。僕の心境はめまぐるしく変化する。キャンセル・テレフォンか、はたまた職場放棄か?

  幕切れは突然やってきた。西武の代打金村の打球はボテボテのセカンドゴロ。ローズ−石井啄−駒田と渡って併殺完成、同時に試合終了。地響きのような歓声が横浜スタジアムを包み、権藤監督が高く高く中に舞う。そして僕は……また呆然としていた。

  ホテルに3度目の、そして最後のキャンセルの連絡を入れる。今夜はスポーツニュースのハシゴをして、明日は駅でスポーツ新聞を全部買って、職場から一般紙をもらって帰ってきて……また雑誌の増刊号は出るのかな?……3週間前と同じだな……

  疲れきって、でも心地よかったこの3週間だった。結局、スタジアムには行けなかったけど、楽しみは来年にとっておくこととしよう。くれぐれも38年後にならないように……

  大感謝横浜湾星棒球団!!

wb01627_.gif (253 バイト)Seeker's Holiday Camp