2003年10月25日 
サンシティ オータムコンサート 「シネマファンタジー 2003」

曲目解説



ツァラトストラはかく語りき 1968年作品 「2001年 宇宙の旅」より
交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』より抜粋   リヒャルト・シュトラウス(1864-1949)

 この曲は、SF映画史上の最高傑作「2001年 宇宙の旅」の冒頭やモノリスのシーンなどに登場し、映画の印象を決定づける程の強烈なインパクトを観たものに与えます。クラシック曲が映画に使われることはよくありますが、これほど映像と音楽がマッチした作品は他にはないでしょう。まさに、この曲以外には考えられないというのが正直な感想です。
 この曲は哲学者ニーチェの著書『ツァラトゥストラはかく語りき』をもとに、リヒャルト・シュトラウスが作曲した交響詩で、曲自体は全体で35分くらいありますが、映画ではそのごく一部だけが使われています。また、この本は、ニーチェがツァラトゥストラを通じて、自己の思想を展開していくという内容ですが、10代の頃に読みかけて、あまりの難解さにすぐに投げ出してしまいました。
 ここサンシティホールは、特に残響が素晴らしく、曲の最後でオルガンが鳴り終わった後、数秒の間残響が響きます。皆さん、ぜひこの残響を鑑賞してください。他のホールでは味わえません。(ただ、客席が満員だと少し残響時間が短くなるのですが・・・・)くれぐれも弾き終わった直後に拍手されませんように。拍手は残響が消えてからにお願いします。
 因みに、ツァラトゥストラとはゾロアスター教(拝火教)の開祖ゾロアスターのドイツ語表記です。


美しく青きドナウ    1968年作品 「2001年 宇宙の旅」より
ヨハン・シュトラウス二世 (1825-1899)

 ワルツといえばこの曲と言うくらいにポピュラーな曲だけに、「美しく青きドナウ」は他にもたくさんの映画に使用されていますが、なんといっても「2001年」の宇宙船が舞い踊るかのごとくの映画史上屈指の傑作シーンにとどめを指すでしょう。梅田OS劇場の湾曲した大画面に映し出されたそれを観たとき、私は度肝を抜かれました。いかにも完全主義者といったS・キューブリックと当時気鋭のD・トランブルが作り上げたこのシーンは、現代の薄っぺらなCG合成とは違う、気高ささえ感じられます。
ウィーンフィルのニューイヤーコンサートでも必ず演奏される曲ですが、オケとは違ってパイプオルガンでの演奏は、緩急・強弱が頻繁で、たいへん難しい曲です。それをパイプオルガンで表現するのは、実は演奏の瀬尾千絵だけではなく、アシスタントの働きが非常に重要なのです。どうぞそのあたりもお楽しみに。


八十日間世界一周  1956年作品 
ビクター・ヤング(1900-1956)

 トッドAO式70oの世界最初の作品としても知られるこの作品、私はリバイバルで今はなき上六地下映劇で観ました。冒頭、画面を馬車が横切るシーンでそれに合わせて音が移動し、度肝を抜かれたのを覚えています。(よく度肝をぬかれますなあ。驚きやすいタチなのかもしれません) 立体音響(ああ、これも死語ですなあ)初体験でしたが、綺羅星のごとくスターのカメオ出演などもあり、本編の方もとても楽しい作品でした。
 作曲はビクター・ヤング。ハリウッドの映画音楽作曲家の中でも、とりわけ巨匠と言ってもよいでしょう。「シェーン」「大砂塵」「旅愁」「誰が為に鐘は鳴る」などなどあげていけばきりがない程数多くの素晴らしい作品を残していますが、アカデミー賞を受賞したのは本作品だけで、アカデミー賞の7不思議と言われています。
 本日は、平井さんの、伸びやかで、そして歯切れのよいヴァイオリンでお楽しみ頂きます。


テリーのテーマ  1952年作品 「ライムライト」より
チャールズ・チャップリン(1889-1977)

 製作時62才だったチャップリンの芸人としての姿が投影された老コメディアン カリベロとバレリーナのテリーの物語。
人生に必要な勇気と愛について、これでもかという位にチャップリンの思いが語られ、いまさら何も言うことはない程の名作です。チャップリンは非常に多芸で、この作品でも監督・脚本・作曲・振り付け・主演を自らこなしています。また、彼が作曲したこのテリーのテーマは彼の作品の中でも、最も美しい曲として知られています。
 当時アメリカではマッカーシー旋風(赤狩り)が吹き荒れていましたが、信じられない事に、この偉大な映画人をアメリカという国は、事実上の国外追放にしてしまうのです。従って、この作品は、チャップリンのハリウッド最後の映画となってしまいました。その後、公開された作品も封切直後に上映中止になります。
 そして、そのアメリカが彼にこの曲でアカデミー作曲賞を与えたのは、30年後、1972年のことです。
 映画、最後にバスター・キートンとの抱腹絶倒の舞台場面があり、チャップリンが左ぎっちょでヴァイオリンを演奏するシーンでの彼の鬼気迫る目つきは忘れることができません。


アルビノーニのアダージオ 1963年作品 「審判」より
原題『弦楽とオルガンのためのアダージオ』 トーマス・アルビノーニ(1671-1751)

 カフカの原作を映画にした不条理ドラマの古典。有名なこの曲と豪華な監督・出演者(監督オーソン・ウエルズ、出演A・パーキンス、ジャンヌ・モロー、ロミー・シュナイダーなど)に惑わされ、原作も読まずに、うっかり観てしまった私には、何がなんだか判らない内に主人公が死んでしまって終わりという、たいへん困ってしまった映画でしたなあ。
 作曲のアルビノーニはイタリア、ヴェネチアの裕福な生まれで、音楽を職業にする必要もなく、アマチュア作曲家として業績を残した人です。また、かのヴィヴァルディの兄弟弟子でもありました。「アダージオ」は、アルビノーニといえばこの曲と言われる位に、とても有名な曲で、バロックの名曲として知られていますが、アルビノーニのオリジナルは不完全な形でしか残っておらず、後世になって、ジヤゾットという作曲家が補修して現在のこの曲となっています。


エデンの東  1955年作品
レナード・ローゼンマン(1924-)

 旧約聖書の「カインとアベル」の物語をモチーフにして書かれた、スタインベックの原作を映画化したこの作品は、伝説の俳優ジェームズ・ディーンのハリウッドデビュー作品です。この映画で屈折した青春像を演じ、彼は一躍スターとなりましたが、このあと1955年に撮影所内の事故で激突死し、「理由なき反抗」「ジャイアンツ」と3本にしか出演することはありませんでした。
 レナード・ローゼンマンが作曲したこの曲は、スクリーンテーマ集などがあると必ずといって良いほど入っている程の名曲ですが、現在知られている曲はビクター・ヤングが編曲したもので、オリジナルはもっと速いテンポの曲です。本日もこのビクター・ヤング版での演奏です。どうやら当時駆け出しのローゼンマンが、すでに有名になっていたビクター・ヤングにしてやられたといったところですかなあ。
 丁度この原稿を書いているとき、監督のエリア・カザンの訃報に接しました。過去においては、赤狩旋風の時に密告者や裏切り者のレッテルを貼られた時期もありましたが、今はただ冥福を祈りたいと思います。


魅惑のワルツ 1957年作品 「昼下りの情事」より

 ファッシネーションという別名で知られるこの曲は、もとは1900年ごろパリで流行した曲で、当時はシャンソンとして歌われていました。ロマコメの元祖とも言うべきこの映画は、なんといってもA・ヘップバーンの魅力に尽きますわなあ。少女から抜け出し、大人の女性に憧れる主人公を素敵にに演じて、観るものを虜にしてしまいます。ビリー・ワイルダーの演出も楽しいですが、優雅で、甘く、夢の香り漂うこの曲は、まさにこの映画にぴったりです。
 映画の中では、ヘップバーンがゲイリー・クーパ扮する色男の富豪の部屋に忍び込むと、彼は人妻と逢い引きの真っ最中で、その同じ部屋の中で、弦楽四重奏楽団がこの曲を奏でていましたが、今日はヴァイオリンの平井 誠さんの色香たっぷりの演奏でお届けします。


星に願いを   1940年作品 「ピノキオ」より
リー・ハーライン(1907−1969)

 ディズニー作品からの曲をお聞きいただきます。「ピノキオ」で冒頭、コオロギのジミニーが歌うタイトル曲「星に願いを」です。「ピノキオ」は、世界初の長編アニメーションとして大ヒットした「白雪姫」に続き第2作目として製作された作品です。戦前の、しかも第二次世界大戦へ向かう中製作されたとはとても思えない見事な作品で、今観ても十分鑑賞できます。手書きの画の持つ迫力でしょうか、むしろ現代のアニメ作品にない暖かみを感じます。
アカデミー賞の最優秀主題歌賞を受賞したこの曲も、今ではすっかりスタンダードナンバーとして知られるようになっています。手塚治虫が戦後公開されたディズニー作品を見て仰天し、こんな映画を作る国と戦争をしたら負けるのが当たり前だと思ったのも、頷けますわなあ。(この作品が本日の映画の中で、一番制作年度が古いのですよ! 驚きです)


威風堂々 1996年作品 「ブラス」より
サー・エドワード・エルガー(1857-1934)

 この曲は、ロンドンフィルのニューイヤーコンサートでも必ず演奏される曲で、第2の英国国歌とまでいわれている曲です。
 映画は、実在するイギリスのブラスバンドをモデルにした作品です。ヨークシャー地方の炭坑の町で伝統ある吹奏楽団グリムリー・コリアリー・バンドは活動していました。メンバーは、全員が炭坑夫。1992年の石炭産業斜陽の中で、鉱山閉鎖という危機に見舞われながらも、彼らはなんとか苦しい生活と折り合いを付け、音楽を続けていました。 バンドの運営費用はコンテストの賞金と、団員のカンパだけが頼りです。団員たちは酒代を削り、ピエロのバイトをしたり、また妻の目を盗んででもカンパするのです。
 そして苦労の末にロイヤルアルバートホールで開かれる全英大会に出場することができ、見事優勝。しかし、主人公のダニーは、石炭産業を切り捨てる英国政府の政策に反対し、トロフィーを拒否します。そして聴衆に向かってこう言います。「彼らは、よい音楽を演奏します。けれども彼らは炭坑閉鎖で生きる希望を失っています。そんな彼らが優勝して、何の意味があるのか。あなたがたは、アシカやクジラしか保護しようとしない・・・」
 そんな彼らが、帰途バスの中で演奏するのがこの曲「威風堂々」です。英国を象徴するこの曲なのです。
こう書くと一見暗そうな感じですが、この作品には独特のユーモアがあり、また素晴らしい演奏と相まって、楽しい秀作になっています。音楽ファン必見です。


トッカータとフーガ ニ短調  1940年作品 「ファンタジア」より
J.S.バッハ(1685-1750)
 
 数あるバッハの曲の中でも、最も有名な曲です。また、パイプオルガンと言えばまずこの曲の冒頭が連想されるのではないでしょうか。そうあの嘉門達夫ですら”たらりー鼻から牛乳”と歌っているくらいです。こんな素晴らしい曲を20歳前後で作ったバッハは凄い、と思い知る一曲です。
オムニバス形式になっているディズニーアニメ「ファンタジア」の中でも、第一曲目に登場し、この曲だけ他とは違い抽象的なイメージの映像が付けられています。「ファンタジア」の中では、ストコフスキー(この作品の中の指揮者でもある)編曲のオーケストラ版でした。極めて簡単にいうとトッカータとは”即興”で、フーガは”駆け合い”という意味で、バッハのオルガン曲の中でも派手さbP。難解な他の曲とはあまりにかけ離れてた異色の存在なので、バッハの作ではないという説もあるくらいです。
 また、あまりにも有名な曲なので、演奏者の解釈や個性、技量などを比較するのにはうってつけの曲としても知られています。では、瀬尾千絵はどんな演奏をするのでしょうか。それは聴いてのお楽しみとします。
 私個人的には、この曲は「ファンタジア」より「グレートレース」のP・フォークのギャグに使われた方が気に入っているんですが・・・・・・。   《訂正・・・・・上記はP・フォークではなくて、
J・レモンの誤りでした。訂正させていただきます。》


第三の男  1949年作品
アントン・カラス (1906-1985)

 キャロル・リード監督作品。映画の教科書と言われるくらいの作品で、以後の映画にまねされた名シーンが次々に出てきます。モノクロですが、廃墟となったウィーンをとらえたカメラワーク、暗闇から登場するオーソン・ウェルズ、地下下水道での追跡などなど、今観ても古さを感じさせない傑作です。
アントンカラスが作曲、演奏したオーストリア・ドイツ・スイス地方の民族楽器であるチター使った音楽は、墓地での名ラストシーンとともに、いつまでも映画史上に残っていくことでしょう。



踊り明かそう  1964年作品 「マイ・フェア・レディ」より
フレデリック・ロウ(1904-1988)

 ヘップバーンの映画から、もう一曲。
ブロードウェイで大ヒットしたミュージカルの映画化作品。舞台ではジュリー・アンドリュースが主役でしたが、映画的には彼女は無名だったため、興行的判断でヘップバーン主演になったようです。ヘップバーンも「パリの恋人」や「ティファニーで朝食を」で歌声を披露していますが、流石に本格的ミュージカルは無理だったようで、 吹き替えになっています。歌の部分だけゴーストシンガーのマーニー・ニクソンが吹き替えていますが、彼女は「王様と私」のデボラ・カーや「ウエストサイド物語」のナタリー・ウッドなども吹き替えていますので、声には聞き覚えがある方もおられるでしょう。そのためか、この作品はアカデミーの作品、主演男優、監督賞など9部門を獲得しているのに、ヘップバーンは大熱演にもかかわらず主演女優賞にノミネートすらされていません。そればかりか、ジュリー・アンドリュースは、この作品にお呼びかがかからなかったので、同じ年にディズニーの「メリー・ポピンズ」に主演し、アカデミー主演女優賞を獲得するという大波乱がありました。


太陽がいっぱい  1960年作品
ニーノ・ロータ(1911-1979)

 エンニオ・モリコーネと並ぶ、イタリアを代表する映画音楽作曲家ニーノ・ロータの作品です。ニーノ・ロータといえば「ゴッドファーザー」や「ロミオとジュリエット」が有名ですが、なんと言ってもフェデリコ・フェリーニ監督作品での活躍が有名です。「道」「カビリアの夜」「甘い生活」「8 1/2」「アマルコルド」などなど、名コンビはニーノ・ロータが死ぬまで続きました。
 この映画、主演のアラン・ドロンは素晴らしく、卑屈でおどおどした気弱な性格であるにもかかわらず怜悧で野心家という青年を熱演し、彼をスターダムにのしあげたことでも有名ですが、斬新な映像とショッキングな内容は、影響力が大きかったとみえ、その後の日本映画でも「青春殺人者」もののジャンルを築いてしまったほどでした。
 99年、ハリウッドで「リプリー」というタイトルでリメイクされました。私は観ていませんが、ジャガイモ顔のマット・デイモン主演で、なんとなく観ようと言う気が起こりませんなあ。


主よ、みもとに近づかん 1997年作品 「タイタニック」より
讃美歌320番

 豪華客船タイタニックがまさに最期を迎えるとき、甲板でのパニック状態の乗客たちに向かって数名のバンドマンが演奏を始めます。やがて時が来て、リーダーがメンバーに別れを告げ、彼らは一旦散り散りになりますが、その背後から再びリーダーが演奏する曲が聞こえてきます。彼らはまた集まり、演奏を開始します。讃美歌320番(旧)「主よ、みもとに近づかん」は、その時に彼らが演奏したとされている曲です。
 どのタイタニック映画にもでてくる、感動的なエピソードです。
 しかし、事実は静かなワルツを演奏したということですが、たいへん映画的で素晴らしい演出だと思います。また、いずれにせよ死を目前にしてのバンドマンたちの心意気には脱帽します。
 この曲は、教会では葬儀によく奏でられる曲でもあります。救出された人々の耳には、ワルツが讃美歌に聞こえたのかもしれません。


タイタニック 1997年作品
ジェームズ・ホーナー(1953-)

 97年度のアカデミー賞を総ナメにした超ヒット映画のタイトル曲です。(因みに受賞11個は59年の「ベン・ハー」とタイ記録です。あの「GWTW」より多いとは!)
「T1」「T2」「エイリアン2」など武器マニアで知られるジェームス・キャメロン監督作品ですが、彼もこんなに計算された緻密な演出で大作が撮れるのかと、感心させられた作品でした。
 作曲のジェームズ・ホーナーは、近年数多のヒット作、話題作の音楽を手がけている人です。「アルマゲドン」や「パーフェクトストーム」「ディープインパクト」など、レンタルビデオ店の話題作コーナーに行けばズラリと並んでいる作品ばかりです。この人の特徴は、大抵の映画音楽作家とは違い、例えばジョン・ウィリアムスが「JAWS」「スターウォーズ」「レイダース」のように観た人の耳に残るメロディメーカーであるのに対し、感情の起伏や劇的演出を高めるための曲作りをするという点です。つまり、劇伴に徹するという姿勢です。ですから、有名な作品に曲を書いているにもかかわらず、映画のタイトルを聴いても曲を思い出すことができないことが多いはずです。しかし、唯一の例外がこの「タイタニック」で、その哀愁をおびた、どこかアイリッシュ的な曲は皆さんもよくご存じの事でしょう。

トトとアルフレード  1989年作品 「ニューシネマ・パラダイス」より
エンニオ・モリコーネ(1928-)

 以前は名画座と呼ばれる映画館があり、ロードショウを終えた作品をかけ、低料金で営業をしていました。当地伊丹にもグリーン・ローズという洒落た名前の名画座が旧阪急伊丹駅の場所にがありました。2本立て150円は当時でも安く、京一会館、大毎地下、ビッグ映劇、福原国際東映などともに私も毎週のようにお世話になったものでしたが、何時しか封切館に変わり、去年伊丹にもシネコンが出来て、同じ東宝直営ということもあってか、閉館してしまいました。
 今の若い人にとって、名画座が担っていた役割はどうなっているのでしょうか。レンタルビデオがその代わりとは思えませんし、今の時代に名画座は不用なのでしょうか。
 確かにシネコンは、ヒット作でも並ばなくてもいいし、必ず席を確保出来るし、それはそれでいいのですが、ぶらっと訪れポスターを眺めて途中からでも入場する、てなことは出来なくなってしまいましたなあ。
 閑話休題。「ニューシネマ・パラダイス」というのは、シチリア島の小さな映画館の名前です。戦後の時代、この映画館を中心として人々の夢や映画への愛情などが語られ、映画ファン必見の名作です。
 音楽は、イタリアの巨匠、エンニオ・モリコーネ。昔はスパゲティ・ウエスタン(日本ではマカロニ)のあの脂っこい音楽で知られていましたが、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」以後こういう叙情的な曲でも注目されています。先日TVの特集番組で、この作品には息子のアンドレアも曲を書いていたことを知りました。
 それにしても、この映画のラストシーンは泣けますよねえ。


カノン    1992年作品 「花嫁のパパ」より
ヨハン・パッヘルベル (1653-1706)

 「パッヘルベルのカノン」としてよく知られている曲です。彼は、ニュールンベルグで生まれ、オルガニストとしてウィーンなどでも活躍しました。また、バッハ兄弟にも影響を与えた人物として、音楽史的にも大切な作曲家だと言われています。
「カノン」というのは、主題を次々に模倣しながら追っかけ合いが展開される曲のことです。
映画の方は、1950年にスペンサー・トレイシーとエリザベス・テイラー主演で作られた「花嫁の父」のリメイクというかコピーというか、まったく同じと言って良いほど、同じエピソードで作られた作品の、結婚式のシーンに使われています。主演はサタデーナイトライブ出身のスティーブ・マーチンです。私は「愛しのロクサーヌ」以来の彼のファンですが、流石の芸達者も名優スペンサー・トレイシー相手では分が悪いと悟ったのか、試合放棄気味の芝居で、それがまた笑わせます。
 なお、この曲は日本では「遠い日の歌」という合唱曲に編曲され、親しまれています。


いつも何度でも  2001年作品 「千と千尋の神隠し」より
木村弓

 すっかり日本のディズニーになってしまった感のある宮崎駿の作品です。邦画としては300億を超えるbP興収を誇り(2位は同じく「もののけ姫」。因みに実写では先日公開の「踊る大捜査線2」がやっと150億を超えてTOP)、ご覧になった方も多いことと思います。例のごとく水、風、飛行、城(今回は砦のような湯屋)といった彼の作品共通のイメージに塗り込められたアニメになっています。
 彼の監督作品では、そのほとんどを久石譲が音楽を担当し、現在の日本では最高のコンビと言われていますが、この「いつも何度でも」というエンドロールに流れる曲だけは、木村弓という人の曲で、その独特の歌声と共に曲もヒットしました。


スターウォーズ 1977年作品
ジョン・ウィリアムス(1932-)

 この映画の公開当時(もう25年前ですよ)我々若者は熱狂してこの映画を迎えました。それはなぜか。東宝映画の失策に原因があります。子供の頃『ゴジラ』を見て育った世代が、年齢を重ねたのに、それに答えられる作品を提供できなかったからです。たわいのない宇宙大活劇(スペースオペラ)と言ってしまえば、それまでですが、この映画には洗練された特撮とSFの香りのする小道具に溢れていました。だから、我々は熱狂し、現在も続くシリーズとなったのです。
 作曲は、現在のハリウッドを代表するJ.ウイリアムス。
 今回の演奏会では、元々オルガン曲であるトッカータとフーガなどを除いて、ほとんどの曲を瀬尾千絵が編曲していますが、特にこの曲は、4月ごろの準備段階から手直しすること6回に及び、できるだけオリジナルサウンドトラックに近いイメージで聞いていただけるよう苦心したものです。また、演奏の方でも、アシストワークの難しさも「美しく青きドナウ」と並んで本日一番です。アシスタントの塩澤純子さんに大変なご苦労をかけてしまう部分もあります。そのへんのところもどうぞお楽しみに、お見のがしなく。


《おたのしみ》

 アンコール曲として、大林宣彦監督作品から、アノ映画のアノ曲を用意しています。
 どうぞ盛大な拍手をお願いします。

                                                                             文 多田納人(瀬尾千絵ホームページ管理人)


                                                            戻る