●女性専用車両が次々と導入される背景について。
◆女性専用車両は誰が(どこが)推進しているのか?
現在の女性専用車両は誰が(どこが)推進しているのかご存知でしょうか?
答えを先に言ってしまいますと、推進しているのは一部の政党・政治家などです。中には自ら女性専用車を進んで導入したJR西日本のような例(痴漢対策としてではなく、専用車内に化粧直し用のものと思われる鏡を設置するなど、明らかに女性客への人気取りサービスとしてですが・・・)もありますが、実際にはそのほとんどが、政治的圧力によって導入せざるを得なくなったものであると思われます。
2005年に、首都圏の鉄道事業者のほとんどが女性専用車を一斉導入しましたが、実は首都圏の鉄道事業者の多くも当初は導入を渋っていました。しかし結局、当時の国土交通省の圧力によって、一斉導入をせざるを得なくなりました。
これについては、2005年5月12日付の日刊ゲンダイ紙に、「公明党・国交省握り鉄道私物化」(サブタイトルが、「女性専用車両は都議選向けの人気取り」) という見出しで大きく取り上げられています。(当時の国交相は公明党の北側氏)
この日刊ゲンダイ紙の記事には、
●(首都圏での)女性専用車一斉導入は、公明党のごり押しで決まった。
●国会でも(公明党の)女性議員が相次いで質問に立ち、北側国交相に早期導入を主張、北側国交相が「順次実施を促す」と答える出来レースを重ね、国交省内に「女性等に配慮した車両の導入促進に関する協議会」 をトップダウンで設置させた。
●当時、首都圏の鉄道各社は、ラッシュ時の混乱の恐れなどを理由に導入を渋っていたが、こうした異論を封じ込め、大臣主導の「女性等に配慮した車両の導入促進に関する協議会」はわずか2回で終了し、(05年)GW明けの一斉導入を3月に決めてしまった。
●専用車の推進は、公明党の都議選対策である。
ということが記されています。
上記は首都圏での例ですが、札幌・横浜・名古屋・大阪・神戸の各地下鉄に専用車が導入されたのも、市議会等で女性専用車推進派の議員が導入を推し進めたことによるものです。特に名古屋や札幌では、およそ痴漢対策のためとは思えないような状況で女性専用車が設置または拡大されています(詳しくは、当HPのRed Bearのへや、及び反対する会ニュースの過去の記事を参照下さい。)
●女性専用車両は本当に痴漢対策なのか?
さて、↓は国土交通省が発表した女性専用車両に関する報告書です。
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha03/15/151209/02.pdf
この報告書が作成された当時、国土交通大臣が、女性専用車を強く推進している政党の人物であったこととも関係しているのかもしれませんが、その内容は、あんまりなものです。
その内容について詳しく述べていくと非常に長くなるのと、報告書の内容そのものに対しては、当会の他のメンバーが紹介・批判等を行っているので(これについては当HP内、マスターのへや参照)、深くは述べませんが、ここでは報告書の中から、2005年の首都圏での一斉導入に先立って、関西の京阪・阪急で行われた女性専用車両の試験導入についての記載を紹介します。
◆痴漢増加も女性専用車両の効果!?
この報告書の50ページでは、京阪と阪急での専用車両導入前と導入後の痴漢発生件数を表にして比較し、専用車両の効果で痴漢発生件数が減少したとしていますが、これは誤差の範囲のことで、専用車両の効果とは言えないと思います。(なぜなら、確かに6ヶ月間の総数ではわずかながら導入後の方が減っていますが、月別で見ると導入前よりも増加している月もありますので。)それについてこの報告書では、
>阪急及び京阪では痴漢被害報告件数は導入当初減少傾向にあった。痴漢件数が増加している月がある点については、両電鉄会社が女性専用車両を導入し痴漢が犯罪である事を利用客に改めて呼びかけ浸透させることにより女性が勇気を持って声を上げやすくなったのではないかという事が考えられる。
と述べています。痴漢件数が減少すれば「専用車両の効果」で、増加すれば「女性の意識の変化で痴漢の逮捕率が上がった」
と言うのですから、どうしようもありません。
ここで、参考までに専用車両導入後の痴漢発生件数の変化についての資料を示します。
(参考資料)
・朝日新聞(2004.8.13)によると兵庫県警が検挙した車内の痴漢件数はJR・神戸市営地下鉄などで女性専用車両が導入される前の'02年が80件、導入後の'03年は91件に増加しています。
・中日新聞(2003.9.22)によると名古屋市営地下鉄東山線での痴漢検挙数は女性専用車両導入前の'00年=31件、'01年=37件、導入後の'02年は36件と、ほとんど変わっていません。(その後の2006年の名古屋市議会議事録においても、「専用車導入後も痴漢件数に変化が見られない」との交通局側の答弁が記載されています。)
・西日本新聞(2003年夏ごろ)によると、西鉄では、女性専用車両導入直後の1ヶ月間での痴漢件数は7件で、前年同時期の1ヶ月間の倍以上に増えています。(導入後1ヶ月間で7件・前年度同時期は3件)
・日本経済新聞NIKKEIプラス1(2006.5.20)12面のコラム「女性専用車両の怪」の中で、JR東日本お客様サービス室の担当者のコメントとして、「導入時の調査で六割のお客様が賛成。ただ痴漢発生件数は減っていません。」 との記事が掲載されています。
・朝日新聞(2006.8.8)によると、JR中央線では導入前の04年には188件だった痴漢件数が、専用車導入後の05年には217件に増加(+29件)。京王線でも深夜時間帯のみの実施だった04年には121件だった痴漢件数が、朝・夕ラッシュ時にも拡大した後の05年には、146件(+25件)に増えているとのことです。(JR埼京線では痴漢件数が減少したと報道)
・朝日新聞(2006.10.27)によると、東武鉄道では女性専用車設置後、女性客が苦情を申し出る件数が逆に増加したとのことです。(具体的な件数は記載なし。記事では「女性客が苦情を申し出る件数が逆に増えた」 というような記載がされていますが、それに対する東武鉄道側の「(専用車設置により)女性が助けを求める声を上げやすくなったからではないか?」 という見解が記載されていることから、女性客の苦情申し出というのは、痴漢被害の申し出と考えられます。)
・日経ネット(2009・8・25)によると、「列車内の痴漢被害が依然として高止まり傾向にあるということが、警察庁のまとめで分かった」 との記事が掲載されています。(女性専用車が全国的に広がってから何年も経っているが、やはり痴漢被害件数が高止まりのままということである。つまり、女性専用車では痴漢被害が減っていないということを示している。)
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ちなみに、女性専用車両導入後、痴漢の件数が増加したことについての鉄道会社のコメントは以下のようなものです。(新聞報道より)
●女性専用車両の導入を機に勇気を持って届け出る人が増えたのではないか。
●女性専用車両の導入によって痴漢は犯罪という認識が浸透し、隠れていた被害が表面化しつつあるのではないか。
国土交通省の報告書の内容と同じようなことを言っているのがお分かりいただけると思います。
また、上記参考資料の2006年8月の朝日新聞の記事でも、JR埼京線で痴漢件数が減ったことについては、「(JR東日本が)専用車の効果と胸を張る。」 と記されている一方、京王線で専用車拡大後、痴漢件数が増加したことについては、「女性が泣き寝入りしなくなり、犯行が表面化する傾向があるのでしょうか」
という京王電鉄関係者のコメントが掲載されています。
また、2006年10月の朝日新聞の記事にも、上記参考資料の中で触れた通り、(痴漢件数が増加したのは)専用車設置により、女性が助けを求める声を上げやすくなったからではないかと(東武鉄道側が)見ている、という主旨の記載があります。
「専用車を設置すると、女性が声を上げやすくなり、痴漢の件数が増える」 というのは、一体何を根拠にしているのでしょうか? どう考えても、専用車で痴漢件数が減らなかったにもかかわらず強引に、「専用車は効果あり」 とこじつけているようにしか思えないのですが・・・
●鉄道事業者等の対応。
◆女性専用車両で痴漢が減らないと分かれば、
「女性に安心して乗っていただくため」と導入理由をすり替え。痴漢件数も隠蔽。
上記で述べてきた通り、専用車導入後も多くの路線で、痴漢件数が横ばいまたは微増に転じていることはお分かりいただけたかと思います。そしてそのことについて、当時の国交省や鉄道事業者が、(痴漢件数が逆に増加したのは)「専用車両の設置によって、女性が勇気を持って被害を申し出るようになったからではないか?」 という、こじつけ的な解釈の仕方をしていたこともお分かりいただけたと思います。
このように、「女性専用車で痴漢は減らない」ということは、ほぼ証明されてきたかのような感がありますが、専用車推進勢力や鉄道事業者は、このところ、導入理由を「痴漢対策」から、「女性に安心して乗っていただくため」等、「痴漢対策」という言葉を使わない理由に変化させてきているような感があります。
これについては鉄道事業者等のHP等の専用車に関する記載などを見ていただければお分かりいただけると思います。
あるいは、痴漢対策を理由に出していても、それ以外の理由と併記することにより、痴漢対策という理由を相対化させている (つまり、「痴漢対策はたくさんある理由のうちのひとつに過ぎない」ということにしようとしている) と思われるケースもあります。
また、上記にも示したとおり、以前は新聞記事などで各鉄道事業者の専用車両導入後の痴漢発生件数が公表されたりしていましたが、
専用車導入後、痴漢件数が減らないということが世間に知れ出すと、専用車を導入している鉄道事業者が自社路線での痴漢件数を隠すケースが見られるようになりました。
(問い合わせても、「件数の統計は取っていない」と言ってかわすか、または、「件数は把握しているが教えられない」・「内部情報だ」 などと返してきます。 「件数の統計は取っていない」については、以前、新聞記事で専用車導入・拡大後の具体的な痴漢件数が公表された鉄道事業者の中にも、このような回答をしてきたところがありますので、これは明らかに、件数を隠蔽したいがためのウソ であると分かります。)
なぜ、痴漢対策として効果がないことがわかっても、導入後の痴漢件数を隠してまで、専用車を継続・推進するのでしょうか?
本当に痴漢対策なら、件数が減らないと分かった時点で、どうすれば良いかを考え直すはずです。
ここからも、女性専用車は設置・継続自体が目的で、痴漢対策は単なる口実に過ぎない ということが分かります。
痴漢対策と言っておけばもっともらしく聞こえるし、また反対意見も言いにくくなるだろうということだったのではないでしょうか?
●女性専用車両は逆効果?
◆「女性専用車両に痴漢冤罪防止効果もある」は、誤認識。
先にも述べた通り、女性専用車両導入後も多くの路線で痴漢の件数は減っていない(路線によっては増加している)わけですが、よく考えてみると、男性のいない車両が1両出来て、痴漢の発生する可能性のある車両が1両減ったにもかかわらず、痴漢の件数が減るどころか逆に増加したということは、一般車両での痴漢発生率が大きく上昇したということになります。
また、痴漢の発生率が上がったということは、痴漢冤罪も以前より発生しやすくなっているのではないかと思われます。
女性専用車があってもそれに乗らない女性が多い上に、女性専用車両が出来た分、一般車両の混雑がさらに増し、痴漢やその冤罪が以前よりも発生しやすくなっているのではないでしょうか?
そして、もし本当にそうだとすれば、女性専用車両は男性にとってはまさに「百害あって一利なし」と言ってもいいような気がします。
また、鉄道事業者の中にも、「女性専用車は痴漢冤罪防止にもなる」 などと言っているところがあるようですが、これは「真っ赤なウソ」 であると言っても良いのではないかと思います。
大阪市営地下鉄御堂筋線で、示談金目的の痴漢でっち上げ事件が発生しましたが、これも女性専用車が設置されている状態(地下鉄御堂筋線は、全列車で終日女性専用車設定)で発生しています。
しかしながら、専用車のことを取り扱ったマスコミ記事等では、「女性専用車は痴漢冤罪防止にもなるので男性のためにもなる」 という意見が取り上げられたことがこれまで何度もあり、これではマスコミが世論を誘導しているかのように思われても仕方が無いと思います。
●女性専用車両は「任意協力」であるということについて。
◆「任意協力」は憲法14条の規定に触れないようにするため。
女性専用車両に反対する人の中には、「女性専用車両は憲法14条違反ではないか?」 とのご意見を持っておられる方も多いようですが、どうやら、鉄道事業者側が男性客を女性専用車両から「強制排除」 しない限りは憲法14条には触れないようです。
しかしながら、全国に先駆けて専用車両を導入した、関東の京王やJR埼京線などでは、専用車両に間違えて、あるいは抗議乗車しようとした男性が、ガードマンに強制排除されたという話をネット上などでよく見かけます。(関西でも、導入され始めた当初はそういう話が時々聞かれました。)
しかし、女性専用車両が広がりを見せるにつれ、「女性専用車両は強制か?」という質問に対し、鉄道会社は「女性専用車両は任意協力であり、強制ではない(法的強制力はない)」 という回答をしてくるようになりました。
これは、もし利用者などから訴えられた場合、裁判所などに対し「男性を強制排除はしていない(任意協力をお願いしているだけ)なので、憲法14条違反には当たりません」 と主張するために、このような態度をとっているものと思われます。
つまり「強制ではない」 といいながら、実際には「任意協力である」ということは、一切利用客には公表せず、強制であるかのように思わせて、なおかつ専用車に乗る男性には出て行くように言ったり、場合によっては強制排除する一方で、憲法14条違反について問われれば、「強制ではない」 と言い逃れをするという実に汚いやり方のように思われます。
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