合併ガイドライン案のメモ

 合併ガイドライン案が公表されました。新聞報道では、25%基準を撤廃、3社集中度70%で寡占とするといったことが出ているので、えっと思い、早速ざっと目を通しました。明確になった内容が結構あります(実務では当然のことも入っているのでしょうが)。以下は私の関心に基づき(原則としてコメント抜きですが、便宜のため項目の後ろに()で覚え書きを書いているものがあります)項目だけ上げました。(追記)数人の方からガイドライン案はどこにあるのかという質問がありました。公取委のHPの報道発表資料の6月18日のところです。 アドレスと次の通りです。http://www.jftc.admix.go.jp/pressrelease/98.june/980618.pdf

1)一般的説明とあとは事例の紹介という記述のスタイル。

2)株式保有による結合関係の成立について保有率25%・1位、10%超・考慮事項列記などと明確化。

3)役員兼任による結合関係の成立について、臨時雇い、出向等の扱い、過半数の場合、代表権のある場合、その他の場合の考慮事由の列挙、ホワイトリストあり。

4)合併と株式保有等の結合関係の強弱で、競争への影響が変わりうる。

5)営業譲受の「重要部分」は譲渡会社にとってという意味。

6)一定の取引分野について部分市場を認める、関連して平成5年の王子製紙・神崎製紙事件になお先例性ありとする。

7)輸出等あっても国内の取引先への事業活動の範囲を中心に見る。

8)しかし日本からの輸出取引にかかる一定の取引分野の成立はありうるとする(輸出競争の制限も問題にするのか?)。

9)競争の実質的制限の判例は、東宝・新東宝事件判決のいわゆる前半部分だけで、「すなわち」以下は含まない(引用していない)。

10)「こととなる」には独自性がある。競争の実質的制限が必然ではないが容易に現出しうる状況がもたらされることで足りるとする蓋然性を意味する(私的独占と変わらないとする説を否定)。

11)判断要素として、(1)当事会社の地位、(2)市場の状況、(3)その他を見る。

12)(1)ではシェアの大きさ、変化の度合い、他の競争者との格差を見る。具体的数字については以下の記述のみ。参入が容易で、寡占的でなく、シェアが25%以下、かつ第2位以下である場合、競争を実質的に制限することとなるとは通常考えられない。シェアは販売数量が基本。生産能力は、必要に応じて考慮に入れる。

13)(2)において、「いわゆる寡占的な市場」に言及し、「上位3社累積シェアが70%を超える場合等」と定義。寡占市場に変化する場合、競争者間において協調的行為が行われやすくないことを考慮する。ただし、有力な競争者の存在が牽制力となる場合もあるので、牽制力となるか、強調要因となるかは、市場の過去の競争の状況、とくに市場シェアや価格変動状況を参照する。(企業結合規制で協調的寡占を問題にすることを明示した、とくに18条の2の高度寡占を形成するものは問題になりうるとした、この文脈で寡占に言及したと思われるー泉水・経済法学会年報18号も参照ー)

14)潜在的競争理論を維持。

15)取引関係に基づく閉鎖性・排他性という項目で、垂直的企業結合規制に踏み込んだ記述(「取引の機会」がキーワード?)。

16)破綻会社について、実質的に債務超過に陥り、近い将来の倒産、市場からの退出の蓋然性が高い場合、一般に独禁法上問題になるおそれは小さい。(本文ではLRAへの言及がないが、例では、同社を支援できる企業が見あたらないことも考慮したとはしている。LRAは考慮要因?)

17)効率性について、効率性の改善が競争を促進する方向に左右すると認められる場合、これを考慮する、とする。括弧の中では、例えばとして、下位企業の合併によるコスト競争力等の上昇→製品価格の引き上げ等→上位企業との競争促進をあげる(援用できる場合を限定?上位企業では認めない?)。

18)共同出資会社(ジョイントベンチャー)について、基本契約のいかんでは、4章、3条(不当な取引制限)等に違反することもありうる(重畳適用説を明示、先例は四国アンホ事件)。

19)事前相談は、秘密の部分をのぞき、支障のない限り、その概要を公表する。