ショコラ
〜maid cafe "curio"〜
戯画
’03/04/04 発売
恋の変化球勝負♪(笑
・・・訳の分からないタイトルを付けてしまいました(^^;

このHPでは私の個人的なお気に入り作品のみをレビューしていますが、
実はこの作品、「お気に入り」なのに長い間ランク入りしていませんでした。
私の中では「BEST OF 2003年度作品」なのにです。

これには理由が2つ程ありまして、1つは「攻略が難しすぎる!」です。
この作品はオーソドックスな移動先選択のゲームなのですが、
何処に誰がいるかが表示されない為、「鬼のリロード作戦(^^;」が必要です。
また、UPDATEすると上記の問題は解決するにもかかわらず、
TUREエンドの為には目標キャラだけではなく
たった一度だけの「表示されていないイベント」が条件になっているので、
それを見つける為に結局全ての場所を選択せねばならず
「鋼鉄の忍耐力」と「時間」が必要になります。
(↑素直に”攻略”を見ろ!と小一時間(笑)

もう1つが「シナリオによって表現の方向性が違う」です。
これは我が家が「属性選択」でシナリオの性格を分けている事が原因ですが、
どの項目に入れたら良いか迷ったんです・・・。
あるルートではシリアスに。あるルートでは泣かせ。あるルートでは笑い転げ・・・。
「エ〜っと、私にどうしろと?(笑」
・・・悩んだ結果「泣き」と「笑い」の両方に登場させました。
(↑最初からそうしろ!と小一時間(笑)

そんなこんなで、やっと登場させる事が出来ました♪(^0^)/
あとの問題点は私の文章力でこの作品の魅力が伝わるかどうかだけです。(爆



それでは早速初期設定から見ていきます。
まず何と言ってもこの作品の最大の魅力は「キャラ立ち」でしょう。
作品世界が基本的に喫茶店の中だけと言うストーリーを盛り立てるのは
それぞれに魅力的な個性を持った6人のヒロイン達です。

世間知らずで天真爛漫な家出娘「真奈井 美里」
豪快で明朗快活なくせに世話焼きの腐れ縁「大村 翠」
天然系のおっとりお姉さん「桜井 真子」
奥手で赤面症の頑張り屋パティシエ「橘 さやか」
父親の再婚で新しく出来た甘えん坊の妹「結城 すず」
昔一目惚れしたが、失恋してしまった不思議系美少女「秋島 香奈子」

・・・もう1人(1匹?)居た様な気もしますが、気にせず話を進めましょう。(笑
彼女達とのストーリーを彩るサブキャラもなかなかです。
性格温厚な腕利きシェフのご意見番的存在「榊原 宏幸」
声だけの御出演(笑)温厚で放任主義の父親「結城 誠介」
新しい妹「すず」に目を付けた(?)すずのクラスメート「天宮 悠太」
・・・その他各ルートに入ってからの魅力的な皆様。(笑
そして我らが主人公、
父親の(本当に)急な再婚の所為で「喫茶キュリオ」の店長代理になってしまった(されてしまった)
今喫茶店のアルバイト、昔硬派のヤンキー(笑)「結城 大介」

そんな彼らが紡ぎ出すストーリーは
とても一口では語れない深みを持っています。

ある朝父親からの電話で主人公は目を覚ます。

「今どこだって?」
「成田。」
「そんなとこで何やってるって?」
「これから新婚旅行だからアトよろしく〜♪」
「・・・・・・・・・・・・。」

唐突にえらい状況に追い込まれた主人公は
勤務先の父親の喫茶店「キュリオ」で更なる窮地に追い込まれる。

「おうっ!翠!休みの日までご苦労さん。」
「あぁ、明日からヨロシクね”店長代理”♪」
「・・・・・・・・・・・・。」

度重なる状況に打ちひしがれている場合ではない。
これから父親の再婚(の所為)で新しく出来(てしまっ)た妹「すず」を迎えに行かねばならない。
待ち合わせ場所(らしい)の駅前に到着した主人公の目前に1人の女の子がいた。

「あの〜失礼ですが・・・。」
「い〜え〜、私あなたに失礼なんてされてませんヨ〜♪」
「いや・・・あの・・・。」
「ところで私にお仕事を紹介して頂けないでしょうか?」
「は?またなんで?」
「やっぱり自立すると言えばお仕事じゃないですか〜♪」
「その事をご両親は?」
「・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・。」

そんなあからさまな家出娘がAVにスカウトされたのを助けたりしているうちに、
妹「すず」との待ち合わせに6時間の大遅刻をする主人公であった・・・。

・・・と、導入部をかなり割愛して説明するだけで25行もの文章が必要でした(^^;
終始こんな感じで軽快なドタバタコメディが展開します。
もうお分かりだと思いますが、
舞台は現代日本。父親からムリヤリ押し付けられた「キュリオ」を
店長代理として楽しい仲間達と守っていく設定です。
ココで好感が持てるのが、作品のほとんどが「キュリオ」を舞台に展開する所です。
意味も無く「舞台」を増やさない事で、より一層ヒロイン達の
それぞれの事情や感情を自然と浮き立たせています。

次にシナリオを見ていきましょう。
シナリオライターは今となっては業界に無くてはならない存在。
「丸戸史明 with 企画屋」様。
戯画の看板ライターであると共に、いろんなブランドで活躍されています。
彼の書く丁寧(冗長ではありません)なシナリオは、
洒落っ気の利いたテキストと相まって素直にシナリオ世界に引き込まれます。
正直な所、これだけのシナリオを他の作品を作っている合間に
書き上げているのは、驚愕に値します。
(ちなみに制作期間最短記録らしいです・・・(^^;)
前置きで書いた通り、このシナリオは各キャラルートに入ってから、
それぞれ全く違った表情を見せます。
しかし、共通ルートに散りばめられている「伏線」が
ちゃんとそれぞれのルートで昇華されています。
この一見相反する要素をうまく取り入れられている要因は、
前述した「悪戯に舞台を広げていない」事だと思います。
各シナリオに共通したテーマ「キュリオをみんなで盛り立てる」があるお陰で、
登場人物の意思の疎通を図って、その上でうまく個人の感情が表現出来ています。

このシナリオはプレイヤーを置き去りにして、何処かへ旅立つ(笑)様な事はせず
ちゃんと最後は「キュリオ」に戻ってきますので安心してストーリーを堪能して下さい。

・・・そしてストーリー展開を見ていきますが、
どのルートのシナリオでも共通しているのが
「ヒロインと引き離されるor喧嘩別れしそうになるイベントがある」です。
これは恋愛モノの常套手段の「雨降って地固まる」ですネ。
それに代表される様にこの作品には意外性は一切ありません。
そう言う意味では「恋の直球勝負!」です。(笑

しかしこの作品を凡庸ならざるものにしているのは、
前述している「エッセンスの多様さ」につきるでしょう。
そのエッセンスを「日常で起こる様々なイベント」として表現する事で
自然にプレイヤーに各ヒロインの個性と作品世界を伝えてきます。
そして、それぞれのイベントが実は各ルートの伏線になっている2重構造の造りです。
これも、常套中の常套なのにも関わらずシナリオの丁寧さのお陰で、
所謂「マンネリ」を感じさせる事なく、むしろ「素直さ」として感じられる程です。
そんな共通ルートに正に「ばらまかれている」各ヒロインの伏線を、
それぞれのルートの必然として見事に纏め上げています。
その結果として各ルートの表情(表現方法)が違いを見せる訳です。

以下に各ルートのテーマと表現方法を表にします。
ちょっとネタバレなので、テーマだけ伏字にしますので反転してご覧下さい。

ヒロイン テーマ 表現方法
 真奈井 美里   実家(父親)との確執   ほんのりコメディ、ちょっぴり涙 
大村 翠  学生時代からの片想い   ドロドロ愛憎劇@昼メロ風味 
桜井 真子  逆「光源氏作戦」(笑  お母さんといっしょ(爆
橘 さやか  一流パティシエへの夢  熱血料理モノ(?)
結城 すず 家族愛 つるぺた妹萌え
秋島 香奈子 学生時代の確執 直球泣きドラマ

・・・と言う事で、笑いなら「美里ルート」泣きなら「香奈子ルート」がオススメです。
OHPを見ると「すず」が人気の様ですが、私はちょっと・・・(^^;

特に「香奈子ルート」の力の入りようと言ったら、それはもう!(笑
そのサイズと言い、途中に他のヒロイン(ココでは紹介していません)を
挟まないとTUREエンドが見れない攻略性と言い、
丸戸様御本人も「暴走しちゃいました〜(^^;」と仰っている通り凄まじいものがあります。
プレイするなら一番最後に攻略しましょう。きっと他のシナリオは忘れるでしょう。(笑
・・・実際にはそんな事はありませんヨ!(汗)ちゃんと他のシナリオも引き立っています。

そんなこの作品を我が家の常連「とっぷがん様」は「寄せ鍋」だと言いました。
「キュリオ」というダシの鍋に色々な材料(キャラ)が入っていて、
互いの味がスープを通してほんのり味付けし合っているような。
材料はごくありふれたものばかり(奇を衒わない)だけど、
火の通り方や味の染み方が絶妙なタイミングでテーブルに出され、どれを食べても美味しく頂けるみたいな。
冷えた体を温める「寄せ鍋」。
大勢で食べると美味しい「寄せ鍋」。
しばらくするとまた食べたくなる「寄せ鍋」。
ショコラの舞台である「キュリオ」はそういうところ、と言うのが底辺に流れているテーマだと思います。
見た目が普通の鍋なので文章だけでは表現しにくく、
実際に食べてみないとその良さは伝わりにくいのかも知れませんね。
・・・・・
・・・

もう何回リプレイした事でしょう・・・。
(↑当然フルコンしてからの回数の事です)
いつも変わらぬ感動を与えてくれます。
ぜひ皆様にも味わって頂きたいものです。




人が生きると言う事は簡単な事ではない

周囲の人に影響を与えもするし、受けもする

決して「1人」にはなれないのだ

そう・・・だからこそ

あなたが居てくれて良かった