▼川端康成『雪国』は、「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。」から始まる。この書き出しが頭に浮かんだのが知人からのメール。

▼「五月の連休明けから、朝、お母さんと離れることが困難で大泣きしていた男の子が、今は、晴れやかな顔で登校しています。」これだけでも、子どももお母さんも先生も大変だったろうなということを容易に想像することができます。しかし、ベテランの先生はあわてません。メールは続く。

▼「今、トンネルの中にいるけど、出口があるからね。今、どの辺?」と聞きながら励ましました。「この辺」と指し示す場所が、入り口付近、半分、四分の三と出口に近づき、五月の終わりの運動会を境に、出口に最も近づきました。「トンネルを抜けられてよかったね。トンネルを抜けたら入り口のときより、心がこんなに大きくなっているよ。」と言うと、大きくうなずいていました。

▼「トンネル」に入った時は真っ暗で不安。しかし、前へ進めば、必ず出口がある。出口は、明るい未来と思えば希望が見えます。大人にとっても迷った時、役立つ言葉。

▼メールの結びは「トンネルは、自分を客観的に見る機会であり、次の自分に切り替わるための自己決定の機会になっているかなと思います」でした。  (吉永幸司)