校内研究「考えることを楽しむ児童の育成」
蜂 屋 正 雄

 北野小学校では、表題のようなテーマで、昨年度までは理科を、今年度からは国語科を切り口として研究を進めている。蜂屋自身は今年度より担任を外れ、研究主任をいただき研究を進めることとなった。

 昨年度は、問題解決場面の「予想」や「考察」の場面を取り上げ、児童一人ひとりが共通の課題に対して自分の考えを持つこと、賛成や反対の立場を明確にして意見を交流する中で、実験方法を考えたり実験結果と自分の予想から考察したりすることで「考えることを楽しむ」ことができた。一方で、目の前に実物や現象があるにもかかわらず、問題意識が共有できない、自分の考え(「予想」や「考察」)が持てないという場面も見られた。

 今年度は、昨年度弱さを感じた、児童一人ひとりが考えを持つこと、持った考えを自分の言葉で表現することを国語科で研究している。テキストに対して自分がどう問題意識を持ち、考えたかを書き残したいと考え、副題を「〜教材文の叙述を元に自分の考えを交流することができる国語科の授業づくり〜」とした。

 今年度研究を始めるにあたって、研究推進委員の中から出てきた声は「国語科の教材研究の仕方を基礎から学びなおしたい」というものであった。そこで研究会では、まず、「三色ボールペンで読む日本語」(齋藤孝)を使って、本文に線を引きながら読み、なぜ、そこに線を引いたのかを考えることを体験してもらった。その後、教材文を根拠に考えを持つ姿のモデルとして、ビブリオバトル(書評合戦)で自分の感じた本の良さを発表する姿を見てもらった。また、滋賀県総合教育センターに学校サテライト研修で講師派遣を依頼し、国語科の教材研究の仕方として一回、国語科の指導要領の活用法と指導案の書き方として一回、また、「学ぶ力向上訪問」で滋賀県の指導主事に一回、CBT事業による滋賀県指導主事派遣で一回の計四回の研修、指導助言を計画している。

 研究授業は全学年で予定しているが、第一回の研究授業として、五年生の「カレーライス」(光村図書)を行った。指導案を作る前に
〇教材文の特性をいかすこと。
〇自分の考えを明確にするための手立て(書く・線を引くなど)をスキルとして示すこと。
〇教材文でつけたい資質能力を明確に示し、年間指導計画を入れること。
〇B評価を共有し、C評価の子がBになる手立てを書くこと。
の四点をお願いしていた。

【教材文の特性について】
 「カレーライス」は、以前は六年生の物語教材となっていた作品であるが、今は五年生の読書教材となっている。高学年であれば、「その気持ちわかる」というポイントがいくつもある作品であり、教科書では重松清さんのほかの本を読むなど、読書の幅を広げるという位置づけである。今回はこの作品の「良さ」を見つけ交流し、みんなで見つけた良さを六年生に紹介し感想をもらうという実践。つけたい資質能力としては、知識理解の読書ではなく、思考力・判断力・表現力の読むことの実践とした。
【読みの手立てと年間計画】
 大事だと思うところに線を引く学習を前教材の「名前つけてよ」「見立てる」「言葉の意味が分かること」でも行い、線を根拠に話し合うという考えを持つ手立てが定着していた。
【しんどい児童への手立て】
 繰り返しの学習と交流をしてから自分の考えを決めることができる学習展開によって、考えを持ちづらい児童も言葉にできていた。
 また、全文掲示に「良い」と思ったところにシールを貼ることで、自分の考えと友だちの考えが一望できる工夫がされていた。

 成果の一方で児童が線を引いた「良さ」を交流することによって、学習を深める過程が課題となってきた。単元当たりの時数が減る中で、つけたい資質能力を絞り、自分と友だちの考えを教材文の良さにつなげる教師の言葉かけの難しさを感じた。
 指導主事の先生方からは、ゴールの持たせ方やモデルの提示、読み解く力といったキーワードも教えていただいた。児童と学びを深めながら教師の授業力も高めていきたい。
(野洲市立北野小)