音読での感情の表し方
桑 原 孟 夢

 4月に谷川俊太郎さんの「どきん」を学習した。音読が中心だったが、その中での子どもたちの成長を紹介していきたい。

 自分はこの学習を通して音読で感情を表現できるようになって欲しいと考えた。このコロナ禍でマスクをし、表情が見えない中でどのように感情を表し、伝えていくのか考えてもらいたいと思い、めあてを設定した。はじめに子どもたちに「どきん」を音読させた。最初は教科書をただ読んでいるだけであったが、その中に一人、首をかしげながら音読する子どもがいた。その子どもになぜ頻繁に首をかしげながら音読しているのか聞くと、詩の中の「かなあ」のところを本当に自分が悩んでいる・考えているように読みたくて声の抑揚だけでなくジェスチャーも加えたというのだ。相手に感情、気持ちを伝える上での大切な要素をこの子どもは身に付けていたのだ。他の子どもたちにもこの授業が終わる頃にはこういった姿になって欲しいと考えた。

 次に子どもたちには抑揚をつけて読んでみたらどうかと提案した。すると、子どもたちは見違えるように読み方が変化していった。ただ読んでいたというところから語りかけるような読み方に変わっていた。抑揚をつけるだけでこんなにも読み方が変わるのか、音読が上手になったと驚き喜ぶ子どもたちの姿があった。

 子どもたちはもっと上手に音読するため、感情を表現するためにはどのようにすればよいのか考えたいと言ったのであった。いろいろな要素を意見として出し合った。ひとつ目は読むスピード、ふたつ目は目線、みっつ目はイメージする、よっつ目はジェスチャーだった。

 学習を進めていくうえでこういった要素・意見を音読に加えていくことにした。まず、抑揚に加えてスピードを意識して読むように指導した。すると、「かなあ」の前を一旦止めて読んでいる子どもがいた。話を聞くと、例えば「かなあ」の前にさわってみようという文があり、その文を「さわってみよう!」と意気込んだけれど、やっぱり悩んでしまったというのを表したかったと言うのだ。スピードを意識するようにと言っただけで、その一歩二歩も先を考えて読んでいた。イメージすることも自然と行っていたのであった。そして最後のジェスチャーを加えた。すると、首をかしげたり、ゆらゆらしてみたりと各々がジェスチャーをして書いてあることを伝えようとしていたのであった。

 この学習を通して感情は簡単には伝わらないということを学んでくれればと願うばかりである。
(京都女子大学附属小)