感情や経験と結び付けて読む 詩の学習から
海 東 貴 利

 詩『あかちゃん 東君平』を教材に選び、詩を読んで、内容を説明したり、考えたことを伝え合ったりする学習を三年生に行った。

●授業の実際(導入の活動:登場人物の行動から登場人物の境遇や状況を把握する場面)…題名と作者名を板書し、続けて次のように板書した。(数字は行を表す)
 @あかちゃんが(    )
 Aおかあさんはうれしくてわらいました。
 Bあかちゃんの(    )
 Cおかあさんはうれしくてわらいました。
 Dあかちゃんに(    )
 Eおかあさんはうれしくてわらいました。

 最初の発問は、「おかあさんはどうしてうれしくて笑ったのでしょう」。児童からは、あかちゃんに続く(〜が、〜の、〜に)といった助詞やおかあさんの行動を頼りに想像したことを次々と発表した。「赤ちゃんが笑いました。赤ちゃんが言葉をしゃべりました。赤ちゃんの弟ができました。赤ちゃんがお母さんと呼びました。赤ちゃんがお昼寝してくれました。赤ちゃんの名前を呼びました。赤ちゃんに服を着せました。赤ちゃんがうまれた。赤ちゃんが大きな声で泣きました。赤ちゃんが病院から家にやってきました。赤ちゃんがご飯を食べました。…」。この時点で実際の本文は伝えなかったが、一人一人の発言に対して「それもあり」だなという周りの雰囲気の中、教材文に集中することができた。

 (かっこ)の言葉を確かめるにあたって、次のFGHを先に板書した。
 Fあかちゃんはどんどん Gおおきくなりました。
 Hおかあさんはうれしくてわらいました。
 さらに、ヒントとして、D行目の(かっこ)の中の言葉(歯がはえました。)を最初に板書し、@行目とB行目の(かっこ)の中の言葉を考えてみることにした。児童がどれかなと思案する時間が流れる中、「@行目に『あかちゃんがご飯を食べました』がくるのは違うのでは…」とつぶやいた児童に、「どうして」と聞いてみた。児童は「(F行目を指さして)どんどんおおきくなったとあるから、(@行目は)歯がはえる前にご飯を食べるのは順番が違うと思ったからです。」さらに「(どんどんということは)赤ちゃんが大きくなっていく順でないといけないのでは…」と発言した。そのことをきっかけに、あかちゃんに続く助詞と成長の順に着目して本当の詩の言葉を吟味する学習が続いた。

●授業の実際(展開の活動:本文の最後の一文Lはどう書かれているか考えさせる学習の場面)
 Iあかちゃんはあかちゃんだと Jおもっているうちに
 Kようちえんに行くようになりました。
 Lおかあさんは(      )

 同じ文章を読んでも着目する部分や、どのような感情、経験と結び付けて読むかによって一人一人違いが出る。併せてほかの人の感じ方などのよさにも気付くことが大事である。そこで、一人一人の考えを聴写し、自分の考えと比較できるように、座席表枠に書き込めるワークシートを準備した。一人ずつ発言を聞き、書き取る学習は今ではアナログに見えるかもしれないが、様々な考えの相違を聞き比べる活動としては効果大だった。

 一人一人の発表を順番に聞いていると、周りから「なるほど」と声があがった。…「ACEH行目に繰り返しの表現方法が使われているので、最後の一文も『うれしくてわらいました。』になると思います。」、「いつのまにか大きくなって『成長して感動しました。』にしました。」、「見送りの時に手を振ってバイバイしているようすを想像して『おかあさんはうれしくて手をふりました。』にしました」、「いつもそばで見ていたのに幼稚園に行っている間は会えないから、『さみしくてなきました。』と想像しました。」など。実際の本文「おかあさんはうれしくてなきました。」を板書すると、これも児童から「なるほど」と納得の声。
(高島市立安曇小)