▼今村翔吾さんは歴史小説『塞王の盾』が直木賞受賞の栄誉に輝いた作家である。作品は、織田信長・豊臣秀吉時代に実在した大津城などを舞台に坂本の石工集団穴太衆が活躍する物語である。「滋賀の作家」を自負する今村さんを、大津市公報『びわこと」は特集記事としてインタビューをしている。

▼記事の中で自らの小学校時代について「小学5年生の時だった。古本屋で何気なく手に取った池波正太郎の『真田太平記』との出合いが人生を変えた。」と回想したことを語っている。その後、司馬遼太郎や藤沢周作を読みあさり歴史・時代小説への大海原へ舟を漕いでいったと記事は紹介をしている。その後十数年、筆を執ることなくダンススクールを継ぎ県内を転々としていた時、生徒に、「翔吾くんも、夢諦めてるやん」と言われ愕然とし「夢を諦めるな」と生徒に投げかけ続けてきた言葉を、自分に向けたことが小説家今村翔吾さんの幕明けになったという。

▼5年生時代の読書が夢実現の動機になったこと。そして、「夢諦めてるんや」に奮起する姿に感動した。それは、読書の力と自らを奮い立たせる言葉の力の大きさを感じたからである。「主体的・対話的で深い学び」の行く先が夢を持ち、その実現に向けて噴火するエネルギーと受け入れる言葉の力の育成の大事さを強く思った。  (吉永幸司)