音読指導について
三 上 昌 男

 新学期、国語の授業開きは、二年生以上の学年では、教科書の扉の詩の音読から入ることを続けてきた。一人で読んだり、みんなで一斉に読んだり、役割を決めて読んだり、詩の世界を想像したり。少しずつ変化をつけて繰り返し音読し、視写も取り入れながら、暗唱まで導いてきた。暗写までできれば、なお素晴らしいと思う。

 授業開きで音読に取り組むのは、国語の授業等で音読を大事にしていく指導方針を学級の子どもたちに伝えたいためでもある。文学的な文章や説明的な文章などの「読むこと」の学習だけでなく、言葉の学習や「書くこと」の学習でも、音読を取り入れる授業を工夫していきたい。さらに、他教科の学習や日常生活にも関連付けて、音読の力を活用したい。

 近年、国語科学習指導案の単元計画を読むと、すらすら音読することを目指した指導が十分なされていないのではないかと感じることがある。一時間目に全文を読み、学習課題を確認し、学習の見通しを持たせる。子どもの初発の感想がどうであれ、たどたどしい音読しかできていなくても、設定された学習のゴールに向かって授業は進んでいく。そのような「主体的な学び」とは言い難い流れだけは避けたいものである。

 音読指導とは、「書いてある文章を正しく音読し、文章内容を理解するための基礎段階とする指導」と定義付けられている。(国語教育研究所編「国語教育研究大事典」明治図書より)  学習の導入時、教材を指導者が範読することが多い。音声は抑揚をつけず、明瞭に読み、子どもが漢字の読みや語句のまとまりを捉えやすいように配慮することが大切である。範読の後に音読練習に取り組ませると、子どもは、自分で音読して初めて読めない漢字に気付くことがある。語彙力には個人差が大きく、個別支援も欠かせない。

 「音読より上手には黙読できない」と言われる。つっかえつっかえ音読するままでは、文章全体の意味理解にはたどり着けない。音読には時間がかかるので、限られた授業時間の中で不十分なところを家庭学習で補う必要もある。以前から音読カードが工夫されてきたが、「一人一台端末」の活用が進む今日、音読を動画で撮影・記録し、授業と家庭学習をつないで子どもが主体的に取り組めるよう工夫することもできるのではないだろうか。

 小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編では、〔知識及び技能〕言葉の特徴や使い方に関する事項「音読、朗読」で、第一学年及び第二学年「語のまとまりや言葉の響きなどに気を付けて音読すること。」・第三学年及び第四学年「文章全体の構成や内容の大体を意識しながら音読すること。」・第五学年及び第六学年「文章を音読したり朗読したりすること。」と示されている。

 低学年の指導を例にとると、「明瞭な発音で文章を読むこと、ひとまとまりの語や文として読むこと、言葉の響きやリズムなどに注意して読むことなどが重要となる。文字を確かめ、内容が理解できるか、どのように感じるかなどを、自分の声を自分で聞きながら把握していくことに重点を置くこととなる。」と述べられている。

 第二学年の教科書(東京書籍)の「読むこと」(文学的な文章)の音読に関する学習では、教材ごとに次のようなねらいが示されている。
*お話を音読しよう「風のゆうびんやさん」(物語の内容の大体を捉え、人物の声を具体的に想像して、物語を音読することができる。)
*声やうごきであらわそう「名前を見てちょうだい」(物語の内容の大体を捉え、人物の行動を具体的に想像して、物語を音読や動作で表すことができる。)
*詩を読もう「いろんなおとのあめ」「空にぐうんと手をのばせ」(詩を音読し、詩に描かれていることを具体的に想像しながら言葉の響きやリズムを楽しむことができる。)
*気もちを音読であらわそう「ニャーゴ」(人物の行動や気持ちを具体的に想像し、想像したことを音読で表すことができる。)

 学習指導要領には、「場面の様子に着目して、登場人物の行動を具体的に想像すること。」が「読むこと」の指導事項として示され、「具体的に想像するとは、着目した場面の様子などの叙述を基に、主人公などの登場人物について、何をしたのか、どのような表情・口調・様子だったのかなどを具体的にイメージしたり、行動の理由を想像したりすることである。」と解説されている。

 音読を通して、「読むこと」の学習が充実し、主体的・対話的で深い学びの実現が求められている。 年間を見通し、音読を大事にした国語の授業づくりに期待したい。
(滋賀県総合教育センター)