本に親しむ
北 島 雅 晴

 自由読書の時間。席を立って、友だちの読んでいる本を見に行く子。隣の席の人に小声で話しかける子。しばらく読んではいるが、すぐに本を机に置いてしまう子。なかなか読書習慣が定着しない。
 「もう五年生だから、二・三十分は、集中して読書ができないのだろうか」と嘆いていてもしかたがない。何らかの手を打たなければと思って実践したことを紹介したい。

@動物物語を読む
 「大造じいさんとガン」の学習を短時間で終え、その後でシートンと椋鳩十の作品を読むという学習を行った。
 「大造じいさんとガン」を二度読んだ後で、この作品の魅力を尋ねてみた。
 ○残雪の行動がすばらしい。
 ○大造じいさんの優しさが伝わってくる。
 ○大造じいさんと残雪との戦いがわくわくする。
といった三つの視点から、魅力をとらえる子がほとんどであった。(その他、残雪が飛び立っていく場面が心に残る、といった感想もあった。)
 これらの発見を活かして、
 ・動物のすばらしさを見つけながら読む。
 ・動物と人間とのつながりに気を付けて読む。
 ・心に残る場面を見つける。
といった視点から、シートンや椋鳩十の作品を読むという課題を設定した。
◇母親のくまが子どもを助けるために川に飛び込む場面が心に残りました。母親の子どもを思う気持ちが、この物語の魅力だと思いました。「月の輪クマ」
◇ロボの知恵と強さが、この物語の魅力だと思います。ロボと残雪は似たところがありました。「ロボ・カランポーの王様」
 一作品読み終わったら、このような「魅力カード」を作るという学習を行った。ほとんどの子が三作品読むことができた。「他の作品も読みたい」という子が出てきたのも収穫であった。

A名作を読む
 「世界名作童話全集」(ポプラ社)が、学校の図書館に四十冊ほどある。「たから島」「十五少年漂流記」「小公女」といった、今まで読み継がれてきた作品ばかりが収められている。本来の翻訳版とは違って、中学年くらいの子が読むことができるように文章量が縮小されている。どの作品も文字が大きく、百数十ページほどにまとめられている。
 「一冊読むのに、二時間あればじゅうぶん。」と、ある子が話していた。以前は、三・四年生の子に読ませていたが、読書習慣があまり身についていない五年生にとっては適していると考えた。一人ひとり静かに読書をし、学習の最後五分間で記録を書くというきわめてシンプルな学習である。
◇今「十五少年漂流記」を半分ちょっと読み終わりました。島には悪い人たちがいるということが分かり、これからどうなるかが楽しみです。
◇「ハイジ」を読んでいます。前、テレビで見たことがあるけど、本を読むのも楽しいです。ハイジが周りの人を明るくするところがいいなと思いました。
 物語がどのように進んでいくのか、期待をしながらどんどん読み進めていく姿が見られる。教室が静かな雰囲気に包まれるのが心地よい。
「先生、家に持って帰って読んでもいいですか。」
と尋ねに来る子も出てきた。いずれ、気に入った本の中から、本来の翻訳本を手に取ってくれることを期待している。
(栗東市立葉山小)