困っていませんか? お手伝いしましょうか?
西 村 嘉 人

 家でゆっくり過ごすつもりでいたが、少人数指導担当の臨時講師として今年度も子どもたちと関わりを持たせてもらっている。
 2年生の3クラスに週4日1時間ずつ算数の複数指導教員として勤務する、が年度当初の打ち合わせであった。
 当初の目論見は1週間で変更となり、個別支援を必要とする児童を中心に2クラスの学習支援をすることになった。

 Kさん。2学期の途中までは、友だちに誘われて学習中でも教室外で自由に過ごすことが多かった。友だちの転校を契機に、少しずつ教室に留まる時間が増えてきた。自席で学習する時間も徐々に長くなってきた。
 しかし、クラスの友だちはKさんがもっと落ち着いて学習することを期待して
「Kさん!すわり!」
「Kさん!うるさい!」
となかなかに厳しい。
「大丈夫!今日も勉強したもんね。」
と寄り添って励ましの言葉をかける。ようやく、こうした言葉が届くようになってきた。

 Hさん。とにかく学習に気持ちが向かない。傍らで
「ノートを出して!」
「めあてを書いて!」
と声かけをしても動かない。
「ノートを出しましょうか。」
「めあてを書くお手伝いをしましょうか。」
と話しかけると、
「自分で出します。」
「書いてください。」
などの返事が返ってくる。途中まで支援を進めると、
「あっ。後はできる!」
と自分で学習活動を引き取って進めることができる。しかし、常に支援が効くとは限らない。機嫌を損ねることも多々ある。

 Tさん。アウトドア派で、昆虫大好き、魚大好き。あまり教室に居着かない。教室に戻ってきたときには、短い時間で課題をこなす。とにかく文字を書くのが大嫌い。問題を書き写すなどの支援をすると、話を聞いていなかったはずなのにすらすらと課題解決を進める。最近は寒いので外で過ごす時間は短くなったが、相変わらず自席で学習する時間は短い。

 様々な子どもたちと関わりながら、ふと自分が現役だった頃の学級経営や子ども支援が気にかかる。「学級全体」ばかりに目が向き、困っている一人ひとりに目が向いていなかったのではないだろうか。そんな思いが湧いてくる。
「困っていませんか?」
「お手伝いしましょうか?」
 今年度、2年生の子どもたちと関わって学んだ2つの声かけである。
(彦根市立金城小)