音読、その具体を示す指導
杉 澤 周 一

 音読について問われ、一案を伝える機会がよくある。
 45分の授業の始めの音読は、子どもが学習内容を捉えるとともに『学習指導要領解説・国語編』にある次の指導のためだろう。

 一、二年〔知識及び技能〕話のまとまりや言葉の響きなどに気を付けて音読すること。
 特に「まとまり」について、言葉・文の意味を捉えにくい一、二年は、発達段階に照らすと一まとまりを捉える音読を日常の授業で継続することが必要だと改めて思う。文節、意味のまとまり、「、」「。」までのまとまりを段階とし先生の範読を追いかけて一斉で読むことを単元を通して繰り返し、単元末には一人で「、」「。」まで一気に音読できることを目指してはと伝えている。三・四年、五・六年もこの音読を実践しつつ学年の目標と内容を。一気にまとまりで読めれば内容を捉えている証と、それを単元のはじめから子どもたちと共有し目指したい。

 45分の授業のおわり、数時間一まとまりの学習のおわり、単元のおわりの音読は、個々のペースで深めた学びにより読み味わいつつ、学びの変容、その自覚のためのメタ認知の機会としたい。目標と学習の足跡がわかる黒板、ノートを眺める。そして、じっくり自身の音読をすることで自身の学びの変容を自覚する音読。読んで終わりたいと伝えている。

 単元を通した言語活動として音読を設定することがある。2年「ニャーゴ」(東京書籍)も叙述をもとに想像した様子や気持ちを音読で表す。学年に相談を受け、一緒に授業を思い描いてみた。  悲しいから、悲しそうに読む。これで個々に練習し、ペアで交流し相互に評価をする学習場面を多くみてきた。ただ、この「工夫」は曖昧と考え、次の提案をした。おこっている気持ちが伝わるように「強く、大きな声で読む」工夫をしてみる。「悲しいことが伝わるように、小さな声で弱々しく読む」工夫をしてみる。
 個々の音読練習をその具体の工夫でやってみる。その後「おこっていることがわかるように、強く、 大きな声で読んでみます。」と告げてから音読する。聞く側は「強く、大きく読んでいて、怒っている気持ちが伝わりました。」「もう少し、大きく読むと、もっと伝わると思います。」と返せる。
 この「工夫」について事前に学習し共有しておくとよいのでは。
 速く・ゆっくり 大きな声・小さな声 強く・弱く はっきり・もごもご 間を空けて 語尾を上げ・下げ …
これらを「音読の工夫」として掲示物にし毎時,板書、教室掲示。(本単元後も、機会あるごとに見て繰り返し定着へ。)この発声そのものの「工夫」により、めあてと実践、評価は具体になる。

 実際の授業場面。一人の子どもが学習活動の最初にモデルとなり「私は、おこっているとがわかる るように、大きく、強く、ゆっくり読みます。」と告げて読んだ。パチパチ。ある子どもが「もう少し、大きい方がいい。」先生が「もう一度、やってみる?」もっと大きな声で力を入れて読んだ。大きな拍手が沸いた。必要なら「もう一度」と伝えようと指導。(この「もう一度」も多くの先生方に提案。「もう少し」と評価を受けもう一度、やってみる。学習は何度か「もう一度」があるのが普通ということを全員が共有して粘り強く学びを深め、高める。
 もう一度、実際の授業の終末。(その前から続けて読む時間がなく)「ニャーゴ」だけ、もう一度自分の「工夫」で音読をして終わりましょう。「せいのっ」「ニャーゴ」その発声は、同じように揃って聞こえなかった。速く一気、ゆっくり強く、それぞれの「工夫」の違いがあったようだ。
(東近江市教育委員会学校教育課)