GIGA元年 〜授業づくりの不易〜
川 那 部 コ

 GIGAスクール構想のもと、本校においても一人一端末が導入された。対面式の授業や端末を活用した授業、さらにオンライン授業とでは、端末を操作し活用する技能以外に教師に求められる授業力には、どんな違いや共通点があるのであろうか。これが、現在、私の関心事である。
 コロナ禍にあって、学級閉鎖等に備え、授業者(A教諭)が別室から教室にいる児童に対し、試験的にオンライン授業を行った。

【五年生理科の学習(授業の流れ)】
@目当てを確認する
「天気予報をいかして、どのように食品ロスを減らすことができるだろうか。」
A資料を読み取る
 天気予報をいかすスーパーマーケットの資料(教科書)を読み取る。
B課題に対する考えを提出する
 自分がコンビニの店長だったら、天気予報をどのように食品ロスにいかすかを考え、端末に打ち込んで提出する。(15分間)
C考えを発表する
D振り返りを打ち込み提出する

「大変だった。」
 授業後、A教諭の第一声である。Bの活動時、提出された各自の考えに対してコメントを返信し、提出の遅い児童へは、ヒントを与えたり、指示を出したりと、15分間一対一のやり取りを続けていたとのこと。参観者には見えづらい、授業の表面には現れにくいところで、個々に対する支援が展開されていたことを知った。

「考えを提出した時点で子どもの学習は完結してしまった。」
 画面に添付されているサイトを開いたり、キーワードを打ち込んで考えを練ったりする自学の姿が見られた一方で、児童の考えは、「暑いときは冷たい商品を、寒いときは温かい商品を多くする」に集約された。対面であれば、すぐさま「天気予報には、暑い寒いだけじゃなくて、晴れや雨の予報もあるよね。」と揺さぶり、思考を広げるであろう。ところが、授業者は個への対応に追われ、全体像の把握が困難であった。しかも、各自が考えを提出した後、児童の課題追究への意識は途絶えていた。

 国語の授業だと、児童が発する微妙な言葉のニュアンスの違いを比較し、各々の考えを交流して言葉の学びを深める。意外な発言に学習の質を高めるチャンスがある。しかし、追究姿勢を維持させることが、オンライン授業では対面授業以上に難しいことになる。

 A教諭は、教科担任制により、同学年の他の2クラスでも同様の授業を行っており、「3回目にやっと授業らしくなった」とコメントしている。「児童の実態がわかり、予想される反応への対応を事前に考えて、発問を準備することができたから」と言う。

 端末の操作上の工夫次第で解決できることも多々あるであろう。でも、個への支援、課題意識の持続化、実態把握、発問の精選等々。ここに「対面」と「オンライン」、授業づくりの不易が見えてきた。
(栗東市立治田東小)