「オグロワラビー、少し小さいです。」
川 端 大 介

 夏休みが明け、10日ほど経ち、教室に児童の明るい声が帰ってきた。2年生、説明文である「どうぶつ園のじゅうい」の学習が始まった。9段落で構成され、飼育員さんの一日が日記風に書かれている文章である。  全7時間で単元を組んだ。1・2時間目は範読と音読を中心に行った。3時間目から内容に入っていく。「どうぶつ園のじゅうい」は、本文中から課題に合う部分を適切に抜き出す力を高めるのにもってこいの教材である。1段落ごとの書き方がほとんど同じであることから子どもたちにとって、読み進めやすい教材である。

 5段落に書かれている内容を子どもたちと読み取っている時のことである。お昼過ぎに、ワラビーがはぐきの治療をしてもらう場面。ワラビーが治療をいやがるので飼育員さんが3人がかりでおさえにかかることが書いてある。ここで子どもが数ページ後ろに書かれている観察の記録を見て「先生、ワラビーはワラビーでもオグロワラビーと書かれています。」と発言した。どうやらその児童はオーストラリアに旅行した時に実際にオグロワラビーを見て、触れ合ったことがあるそうだ。自分の体験と教材文がリンクしたことがその児童にとっての大きな喜びとなっているように感じた。他の児童が聞く。「ワラビーとオグロワラビーでは何が違うのですか。」その問いに、こう答えた。「オグロワラビーの方が少し小さくて、黒っぽいです。」そして、「クロームブックで調べていいですか。」と言葉が出る。黒板にローマ字を書き、みんなで調べてみた。数分後、「本当や!オグロワラビー黒いし小さい。食べるエサも少し違うんだ。でも、なんでオグロワラビーが書かれてるのかなぁ。」と発言する児童がいた。

 34人いれば、34通りの生活経験がある。学習内容と生活体験がリンクした時の嬉しそうな表情や勢いのある声色は授業を活気づけると実感した。感激したのは、周りの児童が素直に驚きを言葉で表現したことである。1人の児童の体験がクラスの体験であるかのように反応した児童たちが素敵だと感じた授業であった。
 私は、34人での学習は改めて楽しいと感じた。1人の発言に他の児童が反応し、広がりを見せていく。さらに、教師が発問をすることで意見が分かれ、本文を根拠にした話し合いに導いていく。
 次の時間には次の発問を準備している。
 「お風呂に入ることは獣医さんの仕事ですか。」
 自分の意見にこだわりを持ちながらも友だちの多様な意見に「なるほど!すごい!」と思って学んでいくことができる子どもたちを育てていきたい。
(守山市立立入が丘小)