オンラインで物語を指導することの難しさ
川 端 由 起

 新学期始まって早々の緊急事態宣言で、私の5年生2学期の国語科の指導方法は大きく変わってしまいました。2学期の物語文「たずねびと」を指導するのを、夏休みから楽しみにしていました。まず、「この世界の片隅に」の映画を児童に見てもらい、戦争と広島の原爆の恐ろしさを知ってもらいます。「この世界の片隅に」は、作品自体は恐ろしいものではないのですが、何気ない日常が戦争によって最初は、じわり、そして最後は一気に侵されていく様子を描いたものです。「この世界の片隅に」を見ることにより、「たずねびと」の物語の背景や、主人公の気持ちが少しでも理解出来ると考えたのです。

 しかし、8月30日から4時間授業のオンライン授業になり、学年閉鎖もあったことから、「たずねびと」の授業をオンラインですることになりました。物語文をオンラインでやった苦悩を伝えたいと思います。まず、一つ目は、どうしても、抜き出し文の空所補充という問題に頼らざるを得ないということです。第1次は、初発の感想を書くことにしました。これは、通常の対面授業でも行うので、特に問題はありませんでした。第2次からが困惑しました。私が作った問題は、物語のあらすじを確かめる設定で、空所補充問題です。主人公の綾は、@□□□□に名前を見つける。A不思議な□を見る。など合計6問を作りました。答えはどれもすぐに見つかったようです。第3次で、「綾の心情は、広島に行く前と行った後でどのように変わったか」という問いを発しました。オクリンクで答えを送信するように設定しました。広島に行く前は「戦争は自分に関係ないことと思っていた」、広島に行ってからは「戦争を自分ごとと捉え、戦争を起こしてはいけない」と思ったなどと書く児童が多かったです。

 しかし、オンラインで、私は5年生160名に対して、同じ発問を行っていました。普通、私は物語の授業をやる時、初発の児童の感想をとても大事にします。物語で大切なのは、「主人公の気持ちの変化」です。これは、学年によって教材は変わりますが、【気持ちの変化】というのは、学年共通と考えられると私は思います。 【気持ちの変化】が、登場人物の言葉なのか、行動がきっかけなのか、物語によって変わるわけです。それを、今回私が一方的に物語のあらすじを教えてしまっていることにより、本当に児童はこの物語の設定や登場人物のことがわかっているのだろうか、甚だ疑問です。

 なので、他のクラスで、私のオンライン授業の後を受けて、「たずねびと」の続きの授業を行ったクラスから、「おばあさん」は、綾のおばあさんなのか、アヤちゃんのおばあさんなのかわからないと児童が言っていると聞かされた時、やはり!と思いました。国語科の読解の授業は、児童の発言で物語の内容がより深くわかり、疑問も解消できる。教師主導だと、教師の感覚で内容読解が進むので、深い読解は無理ではないかと思いました。

 9月30日まで午前中授業の午後からオンラインが続きます。物語や説明文のオンラインについては、もう少しやり方を考えることが必要だと思いました。
(草津市立志津小)