すべての子どもの学びの保障〜1人1台端末環境の可能性
池 嵜 繁 伸

 2学期当初、午後2時過ぎ、子どもたちのいない教室の大型液晶画面に、次々と1年生の子どもたちの笑顔が映し出されていく。その顔にマスクはない。お気に入りのポケモンのぬいぐるみを抱いている子。両手に持った大きなクワガタをカメラに近づけてくる子。学校とは少し違った姿が垣間見られる。担任がマイクをミュートにするように促すと、どの子も慣れた手つきで操作していく。ただ、いつの間にかミュートを解除してしゃべりだす子が何人かいるのも1年生らしい姿である。自分の話を担任に聞いてほしくて仕方ない様子。

 本校では、夏季休業期間中に全校児童が学習者用端末を持ち帰り、タブレットドリル等の課題に取り組んだ。さらに、2学期当初には、特別支援学級を含む全学級でMicrosoft Teamsによる学校と家庭をつなぐオンライン接続を実施した。冒頭に記したのは、オンライン接続初日の1年生の子どもの様子である。2日間のオンライン接続の実施内容としては、次のとおりであった。
 ・児童一人一人との会話、健康確認
 ・チャットによる会話・問題出題、出席確認
 ・宿題を一緒に行う、解説する
 ・既習学習の復習
 ・ワード、パワーポイント等の画面共有による学習 等
 普段教室に入りにくく別室等で過ごしている子どもが、オンライン接続には参加でき、担任等と会話することができたケースもあった。

 この学校と家庭をつなぐオンライン接続の実施に向け、2学期当初の短期間で、できる限り子ども1人だけで学習者用端末やMicrosoft Teams等が操作できるよう、各学年に応じた操作マニュアルを作成したり、接続練習を繰り返したりしてきた。その結果、後日個別に接続を行ったケースを含めて、予定していた学級すべてで接続を確認することができた。ただし、低学年等を中心に、画面には映し出されてはいなかったが、家族や放課後児童クラブ等の様々な協力があってこそ成立した取組であった。

 このオンライン接続は、市内小中学校共通の取組である。文部科学省では「児童生徒の心身に与える影響が大きい」として全国一斉の休校は行わないとしているが、今後の臨時休校、学級閉鎖等、主にコロナ禍でやむを得ず登校できない子どもたちの学習保障のため、オンライン授業を見据えて、今回のオンライン接続を実施した。

 新型コロナウイルスの第5波以降、10歳代以下の感染者の割合が増加している。現在、学校現場では、感染拡大を抑えながらも目の前の子どもたちの学びの充実を図るという、「感染防止」と「教育活動の充実」の両立に向け、日々様々な面で試行錯誤を重ねている。特に、授業改善の取組については、子どもたちの学習活動やその形態、教師の授業研究会の持ち方等についても、感染防止の観点から制限をかけざるを得ない状況である。

 本校では、「学びに向かう力」が弱く学ぶことの意義やおもしろさを感じることが難しい子どもが、仲間とともに学び合い輝いていける学習の在り方を模索し続けてきた。学習集団としての繋がりを深め、一人一人の子どもの「学びに向かう力」をより高めていくことが重要だと考える。

 このような状況の中、授業改善の新たな切り口として、1人1台端末環境の活用の工夫を促していきたい。これまでの研究の成果を生かしつつ、ICT環境の活用によって探求と学び合いの授業改善をより一層促進することができると考える。そのためには、子どもたち一人一人がICT機器を文房具のように扱える学習者中心の活用の在り方を探求していく必要があるであろう。

 学校は、すべての子どもが安心して過ごすことができ、誰一人取り残すことなく学びを保障できるよう挑み続けていかなければならない。
(彦根市立河瀬小)