巻頭言
力をつけた研究発表会
下 山 和 子

 教職三十八年の最後の年、コロナ禍の最中であった。実はこの年研究発表会を控えていた。しかし、コロナのために紙面発表になってしまった。

 この研究発表会を国語の教科で行うのを決めたのは、私が校長になって二年目のことである。研究発表会をするなら、国語で行いたいと常々思っていた。それは、子どもたちの様子を見ると、「先生トイレ」という言葉のように、しっかりとした話ができない子どもが多かったからである。「先生トイレに行きたいです」と話すことが、子ども同士のトラブルを減らすことにもつながるという気がしたのである。そこで、問題になったのが、講師の先生である。自分の頭にいちばんに上がったのが吉永幸司先生である。市の教育委員会に務めていたとき、吉永先生の本を読ませていただいた。共感できるところばかりで、先生をお呼びし、学校全体で勉強できればよいと考えた。自分のできる最大限の知恵を絞り、吉永先生とお話できるようになったときの喜びは今でも忘れることができない。

 「国語力は人間力」を合言葉に国語の研究が進められた。研究一年目の夏には吉永先生のお話を聞く機会を設けることができた。私が心に残っている言葉は、「未来を拓くということを皆さんはどう考えていますか?僕は、中学に行っても国語が好きだという子どもを作ることです」とおっしゃっていた。国語は小学校ではいちばん多くの時間を費やす。その国語が好きであるということはとても大切なことだとお話を聞きながら感じた。「国語力は人間力」を目ざして、学校の職員がチームとなり取り組んだ。その中で「振り返りシート」や「ノート検定」などを通して、話す・聞く・読む・書く力を育ててきた。特に、吉永先生がおっしゃったのは丁寧な言葉で最後まで話すことが大事だということで実践した。

 次第に子どもが変わっていくのがわかった。そして、教室の中が落ち着いてきた。自分の意見を発表しやすくなり、聞くことも楽しそうであった。日常生活では語尾まで言える子どもが増えた。成果が出ると先生たちもやる気が出る、そんな良いサイクルができた。

 コロナ禍だったが、その中で、先生たちや子どもたちが国語の力をつけることができた。吉永先生のおかげであると、心から感じている。ありがとうございました。
(前中央小学校長)