モデル・きたじまくん
北 島 雅 晴

 学級の子どもたちに話をする時、よく「きたじまくん」が登場する。
 きたじまくんは、ちょっと変わってはいるが、どこにでもいそうな子である。
「休み時間に、他のクラスの子とけんかをして、泣かされてしまいました。その時、よしこちゃんが来てくれて、『きたじまくん、だいじょうぶ?泣かなくていいよ』と優しくなぐさめてくれるので、余計に泣きたくなってきたのです。」
といったように、私の幼い頃の実話を語る。等身大のきたじまくんである。読み語り等いろいろな話をする中で、きたじまくんの話は、子どもたちが一番楽しみにしてくれる。

   きたじまくんは、学習の中でも登場する。たまに優等生の場合もあるが、どちらかというと、あまり出来のよくない場合が多い。
「これは、きたじまくんが書いた作文です。ちょっと変だな、直した方がいいと思うところはどこでしょうか。」
と、二年生の子に投げかける。
「六行目の、かぎかっこのところは、行を変えた方がいいです。」
「ちょっとひらがなが多すぎる。いくとか、たべるは漢字の方がいいと思う。」
「題名が『きのうのこと』では、何が書いてあるのかが分からない。題名を変えた方がいいと思います。」
「どんな題名がいいと思うかな。」
「えっと、『家ぞくでレストランに行った』とか『おいしいオムライス』とか‥‥。」
「その前に、食べたことで書くのはよくない。もっと誕生日だなということを書いた方がいいと思います。」
「そうだね。行ったこと、食べたこと、遊んだことを書くと、大体はうまくいかないこと、よく覚えていたね。」
 日記を書く時に、どんなことに気をつけたらよいかを考える学習である。その他にも、カタカナの使い方、一文の長さ、文章の終わり方等、これでもかというほど至らない点を見つけようとする。身近な?きたじまくんの存在が、効果的に働いていると思われる。

 学習前に、作文や読み取りノート等、実際に子どもの立場で作ってみることに取り組んでいる。実際に作ることによって、どういうことに苦労しそうか、どんなことに意欲をもちそうかといったことが見えてくる。
 子ども自身のノートは重要な教材になるが、教師の作品を活用すると効果が上がることも多い。これからも、きたじまくんに活躍してほしい。
(前・栗東市立大宝小)