学級集団に応じた授業展開の重要性
飯 沼 俊 雄

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な感染拡大という危機に直面した。日本では,2020年3月から,全国の小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等で臨時休業の措置が取られ,長期にわたり,子どもたちが学校に通えないという事態が生じた(文部科学省,2021)。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大は学校教育に甚大な影響を与えた。新型コロナウイルス感染症の感染拡大をはじめとする社会の急激な変化の中,一人一人の児童生徒が,自分のよさや可能性を認識するとともに,あらゆる他者を価値のある存在として尊重し,多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え,豊かな人生を切り拓き,持続可能な社会の創り手となることができるようにすることが求められている(文部科学省,2021)。そのような背景から,現行の学習指導要領では,目の前の事象から解決すべき課題を見出し,主体的に考え,多様な立場の者が協働的に議論し,納得解を生み出す思考力の育成や,対話的な学びを中心に位置づけた学力向上への施策が策定され(文部科学省、2021),全国の小学校現場 で様々な実践が志向されている。

 なかでも, 「令和の日本型学校教育」の実現に向けた具体的な方策として注目が集まっているものに,GIGAスクール構想の実現による新たなICT環境を活用した協働学習があげられる。ICTの活用により「個に応じた指導」を学習者視点から整理した概念である「個別最適な学び」と,「協働的な学び」とを一体的に充実することを目指している(文部科学省,2021)。

 しかし,ICTを協働学習に取り入れたからといって,必ずしも「協働的な学び」が充実するとは限らない。

 2020年1月,「読み解く力」市伝達研修会において,第4学年国語科「初雪のふる日」の授業を公開した。この4年生の担任ではなかったので,2月に児童の実態と学級集団の状態を捉えることから始めた。学級集団の状態を診るためアセスメントを行った。本校では,教育相談で行うアンケートを標準化された尺度である「Q-U:QUESSTIONNAIRE-UTILITIES」(小学校用)(河村・田上,1999)を活用して,一人ひとりの支援に役立てている。この尺度は,学級集団の状態を把握することにも適している。このQUから学級集団の状態を捉え,その状態でできる授業展開と残された時間を考慮して構想していた授業を再度,練り直した。この単元では,交流を通して,自らの読みを明確にしたり,友達が発見した多様な謎とその証拠の結び付け方に気付いたりして自分の考えを再構築する力を育成したいと考えていた。従って,指導のねらいに基づき,グループ学習を自在に展開できるように,授業を行いながら,学びに向かう姿勢や参加態度,相互作用の質の向上等,学級集団の発達を促した。

 「協働的な学び」を充実するためには, 協働学習を展開される前提として,学習者個人が取り組むべきことと,チームワークの在り方,学習集団・グループの組織として達成すべき課題があると指摘している(河村,2017)。つまり,協働学習を展開するためには,教師が相互作用の質を高める方略を学級集団の状態に合わせて適切に介入することが求められている。

【参考引用文献】
文部科学省(2021).「令和の日本型学校教育」の構築を目指して〜全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現〜(答申)
河村茂雄 (2017). アクティブラーニングを成功させる学級集団づくり 誠信書房
(湖南市立三雲東小)