子ども参画による目標の具体化
川 那 部 コ

 「マスクをつけなさい」というかわりに「みんなでマスク」と声をかけると、素直にマスクを着用する子が増えたとの学級担任からの報告。

 昨年八月盆明け、早々に夏休みを終了させ、授業を開始した。年度当初の臨時休業を穴埋めするための措置であった。
 全国的に新型コロナウイルス感染症が拡大傾向にあり、滋賀県内でも新規感染者が増加している状況での開始となった。いつ、どこの学校で感染者が発生しても不思議ではなく、それまで以上に感染に対する警戒をし、感染拡大防止を図る必要性から、「新しい生活様式」を定着させなければならなかった。
 また、同時期、本校では、大規模改修の大部分が完成し、校舎がリニューアルした。きれいになった校舎を長く維持したいという願いがあった。
 そこで、「新しい生活様式」をはじめ、学校における生活について、教師側からの投げかけだけでなく、子どもたちのアイデアを生かした目標の具体化をすることにより、一層の定着を図るとともに子どもたちが参画する学校づくりを進めたいと考えた。

 夏休み明けの初日、全校放送で、「相手より先にあいさつをしよう」という四年生の取組を例として、「お先にあいさつ」と銘打って紹介した。
 他に、きれいになった校舎を維持するためには、マスク着用を促し維持するためには、等々について、そのキャッチコピーや取り上げる内容について、全校にアイデアを募集した。題して「はるひが安心生活」。
 数週間後、個人から、学級から、委員会からの応募があり、約四〇点のキャッチコピーが集まった。それらの中から厳選し、次の七点に決まった。

【はるひが安心生活】
 @(壁) あしあときんし
 A(掃除) スミまできれい
 B(整頓) くつをそろえてイメージアップ
 C(過ごし方) 元気スイッチ
 D(あいさつ) みんなにあいさつ! げんきにあいさつ!
 E(仲良く) ふわふわ言葉でつながろう
 F(新しい生活様式) みんなでマスク

 「くつを揃えなさい」というかわりに「くつをそろえてイメージアップ」、「言葉が悪い」に対し「ふわふわ言葉でつながろう」、…。
 コロナ禍で我慢を強いることの多い状況下、生徒指導上の指導において、教師と子どもとの軋轢が軽減されるとともに、子どもたちが互いに声を掛け合うことで定着を図り、より安心して過ごせる学校の実現を図りたいと考えたわけである。
 全校放送で、「はるひが安心生活」を伝えたところ、早速、翌朝のあいさつの声がボリュームアップした。打てば響く姿を実感した。
 その後、生活委員会や保健委員会等の委員会活動でも取り上げられ、活動が広がっていった。
 年度末の学校評価には、「『はるひが安心生活』は、合言葉での目標設定がよく、子どもたちに浸透している」との学級担任からの指摘があった。
 キャッチコピーづくりの面白さ、口ずさみやすさを支えとし、子どもたちは、自分たちの思いが学校の約束事に反映されていく小気味好さを味わったであろう。

 今年度は、「はるひが伝統づくりプロジェクト」を進めていくことを子どもたちに宣言した。
(栗東市立治田東小)