読み解く力の3ステップ
西 條 陽 之

 「モチモチの木」(光村3年)は国語科最後の単元に位置している。3年生でこれまでに学んできたことを生かしながら、豆太やじさまの性格や心情を捉えていくことになる。
 「教科書の絵は切り取られたものだったんですよ、先生!」朝読書を終えるとその発見と絵本の「モチモチの木」(岩崎書店)を持って自分の見解を述べに来る子がいた。教科書と違うところがある。この発見をした子は一人ではなく、他の子も共感しているようだった。

 そこで、これまでの読みから得た豆太と原作の豆太とでは違いがあるのかについて、絵本の全文を配布し、比較しながら読む活動を設定した。読み解く力@の発見・蓄積である。GIGAスクール構想に則るならば、タブレット端末に取り込んで、書き込み、共有ができるようにしたいところであるが、著作権の関係で事前申請が必要であり、今回は断念して印刷することとした。

 次に、A分析・整理として、見つけたことを出し合った。
 ・ー(ダッシュ)が・・・になっている
 ・「女ゴみたいに いろばかりナマッ白くて、」という言葉が教科書にはない
 ・かたかな表記が多い
 ・医者様から見たモチモチの木が描かれている
 「女ゴみたいに?」については、豆太の弱々しさが伝わると感じた子も多かったようだが、今の時代的にも性別や肌の色はセンシティブな面も含んでいることを考慮し、教科書にはないのだろうと補足した。「女の子も強い」という意見にはどの子も納得していた。
 興味深かったのは、医者様から見たモチモチの木である。教科書で学んでいるときにも、じさまの言う「モチモチの木に灯がともる」を医者様はあくまで自然現象の効果として見ていること着目し、信仰と科学の比較をしていた。絵本に描かれた「月と星と雪とモチモチの木」を比較することでその考察が確信に変わったようであった。

 最後に、教科書で掴んだ豆太像と絵本から掴んだ豆太像をすり合わせる時間を取った。読み解く力Bの理解・再構築の段階である。自分なりの解釈にさらなる根拠、新たな発見を以って知識として積み重ねていく。ほとんどの子達は豆太の性格や心情について変化はなかったようであったが、「やっぱり」と再確認する姿が多く見られた。
(大津市立小野小)