教材研究「ありの行列」
西 條 陽 之

 「ありの行列」(光村図書3年)は、子どもにとって身近な存在である「あり」を題材とした説明的文章である。これまで学習してきた知識、技能を用いれば容易に内容の解釈ができる優れた文章である。この単元では、文章を読んだ感想や考えを持つことやそれらを共有することで個々人の感じ方の違いに気づかせることを目標としている。

 冒頭にて、身近な存在であるとした「あり」であるが、果たして今の子どもたちにとってどこまでポピュラーなのだろうか。
 研究者を追究へと駆り立てるのは、疑問を解明したいという思い、対象への魅力が大きいと考える。「ありの行列」において子どもたちを追究へと駆り立てるのは、「行列・研究・実験・仮説・生き物・とくべつのえき・ふしぎ・疑問・驚き」といったところであろうか。

 本文を通して、ウイルソン博士と一緒に実験、考察し、仮説を解明していく体験をさせたい。接続語についてこれまでにも学習を重ねてきているが、「しばらくすると」や「やがて」のように時間の動きを表す言葉への理解を深めるべきであろう。文末表現に関しては、したことを表す「〜ました。」と分かったことを表す「〜です。」「〜ます。」のそれぞれの文に分かれて音読をすると実験の足跡が辿りやすくなるかもしれない。

 考えの形成の段階では、本文と他の資料を読み感想を書く活動が設けられている。ここは感想の例に倣って型を作り、自分の疑問や思いをのせることで技能としての定着を図る。次のステップとして、他のテーマ、テクストで実践してみるのはどうだろうか。自然科学への招待として優れた「ありの行列」の魅力を活かしつつ、知識、視野の広がりを持たせるために、走光性に着目すると面白いかもしれない。走光性についての科学読み物のページやインターネットの文章など複数の資料を読み、感想の型に落とし込む。科学的な見方を育むのも国語科や言葉の力なのだと思う。
(大津市立小野小)