ひらがなをよむ ひらがなをかく
西 村 嘉 人

 新一年生を迎えて4月にスタートするはずだった仲よし一組。コロナ禍のおかげで二か月遅れで新年度が始まった。
 今年は六年生と一年生の女子児童二名のメンバーである。

 一年生のSちゃんは保育園との入学前の連絡会で、
・自分の名前のかなは読めるはずだが、キャラクターシールなどの方が、ロッカーやフックの場所を覚えやすい。
・お話の本をみんなと同じように広げたがるが、絵を見て自分でお話を作ってつぶやく。
・数は5までは数えられるが、物と数が一致するのは2まで。
・クラスの友だちとは仲よく遊べるし、明るい性格なので多くの子から好かれている。
・運動が苦手で、走るのが驚くほど遅い
など、多くの課題を教えていただいた。

 六月はとにかく実態把握に努めた。臨時休校中の二か月間に与えた課題(塗り絵や線のなぞり書きなど)の適否も気になるところであった。保育園の先生から聞いていた内容を大きく異なることはなかったが、休校中に自分の名前を書けるように家庭で教えてくださっていたのが唯一の違いであった。しかし、書いた名前の文字の線は弱々しく形も怪しげなものであった。また、書いた一文字一文字を別々に提示すると読めないというのが六月の実態であった。
 文字言語の指導から始まるのが一年生。とは言うものの、これまでは、殆どの子が入学前に平仮名は読めて、自分の名前を含めて多くの平仮名が書けるところから指導をスタートしてきた。
 平仮名が読めない、文字にまだ関心を示さない子どもと向き合う初めての経験が始まった。

《一学期》
 Sちゃんは、机に向かって鉛筆をもつ「べんきょうがだいすき」と笑顔で話す。また、国語の教科書のお話を聞くのも大好き。「大きなかぶ」のお話も何度か聞くうちに、わたしの読みに声を重ねてくるようになった。耳で聞いて覚えるので、「うんことしょ」と覚え間違うところも少なくない。学習中もマスクを外せない影響もあるかもしれない。
 平仮名を書く学習も交流学級の子どもたちが使っているプリントで少し遅れ気味に進めた。Sちゃんは、友だちと同じプリントで学習することで大満足だったが、練習した文字が読めるようにはならなかった。

《二学期》
 変化は算数の学習で先に見えだした。十までの数が唱えられるだけでなく、実物と数と数字が一致するようになってきた。また、「合わせて」の意味が理解でき「たし算」ができるようになった。
 算数の学習が自信になり、Sちゃんは、さらに「べんきょう」が大好きになり、平仮名の学習に取り組み始めた。
 手札大のカードに平仮名二文字の言葉を書いた「平仮名カード」を次々覚えだしたのである。はじめに覚えたのは「みみ」「め」「はな」「くち」「て」「あし」。次に覚えたのが「うま」。これは教室にあるお気に入りの玩具の名称。
 毎日、国語の学習時間に自分で「平仮名カード」を読む時間を求めるようになった。「あし」と「うま」が読めるのに「うし」が読めなかったり、「かい」は読めるのに「いか」は読めなかったりするSちゃんの学びの構造がまだ私には分かっていない。毎日が私にとっても学びの日々である。
 ずっと目の前においていた「平仮名五十音表」を最近手にするようになったSちゃん。五十音表を見ながら文字を読もうとするようになってきた。でも、
「あいうえ、え。かき、き。えき!」
の読みである。今後、どのように学び方が変化するか、楽しみが尽きない毎日である。
(彦根市立稲枝西小)