語彙指導の改善・充実
三 上 昌 男

 「語彙は、全ての教科等における資質・能力の育成や学習の基礎となる言語能力の重要な要素である」ことから、新しい学習指導要領では、語彙を豊かにする指導の改善・充実が求められている。
 語句の量を増すことに関しては、低学年で「身近なことを表す語句」を、中学年で「様子や行動、気持ちや性格を表す語句」を、高学年で「思考に関する語句」を増すように重点化されている。

 今年度から使用されている教科書では、語彙・意味を題材とした言語学習単元の設定、「学習の手引き」等における言葉の学習内容の提示、巻末や脚注等における語句の説明・整理などに語彙指導が意図されている。
 教科書の十分な活用とともに、日常生活や読書を通して語句を意識し、辞書や事典で調べる習慣を身に付けることで、確かに語彙量は増えていくと考えられる。

 教科書の活用においては、取り立て指導だけでなく、理解教材や表現単元で語彙・語句に配慮した指導も大事にしたい。
 場面をくらべながら読み、感じたことをまとめよう『ちいちゃんのかげおくり』(三年・光村下巻)の学習では、第一場面と第四場面の二つのかげおくりの場面を読み比べる学習活動に取り組む。
 第一場面の動作を表す言葉を見てみると、
「お父さんがつぶやきました」「お兄ちゃんがきき返しました」「ちいちゃんもたずねました」「お父さんがせつめいしました」「お母さんが…言いました」「お母さんがちゅういしました」「ちいちゃんとお兄ちゃんが、やくそくしました」「お父さんが数えだしました」「お母さんの声もかさなりました」「ちいちゃんとお兄ちゃんも…数えだしました」「お兄ちゃんが言いました」「ちいちゃんも言いました」「お父さんが言いました」「お母さんが言いました」
というように、それぞれの会話文を様子や気持ちの違いが伝わるように使い分けられている。
 このように、動作を表す言葉に着目することで、人物のしたことや気持ち、まわりの様子を豊かに想像する手掛かりを得ることになる。また、理解にとどまらず、表現の際に使う言葉を選び、適切に表現する力を向上させることにもつながっていく。

 学習指導要領解説には、指導計画作成上の配慮事項として、〔知識及び技能〕の指導事項については、〔思考力、判断力、表現力等〕の指導を通して指導することを基本とするよう示されている。語彙に関する指導事項を「読むこと」や「書くこと」「話すこと・聞くこと」の学習と関連付けて指導する工夫に努めたい。
(滋賀県総合教育センター)