宮沢賢治が幻灯を通して伝えたいこととは
北 川 雅 士

 10月の中旬から「やまなし」(光村図書6年)の学習に入った。5年生から「大造じいさんとガン」で情景描写について、「わらぐつの中の神様」で物語の特色について学習を積み上げてきた。この教材では「作者と作品の世界観をとらえる」ために、「やまなし」と「イーハトーヴの夢」を読みながら、宮沢賢治という人物が描く作品の世界を叙述から想像しながら、作品を通してどのようなことを伝えようとしているのか、考えをまとめていく学習を進めていった。
 授業の前半は、物語の初発の感想をもとに、作品の世界を想像するために、言葉の意味調べや、情景の様子を想像し、宮沢賢治が考えた言葉や、独特の表現についての解釈をグループや学級で考えを深めていった。
 そして、学習の後半では、「やまなし」を通して宮沢賢治が伝えたいことは何かを、教科書の手引きや、題名など様々な観点から考えていった。

<A児> 賢治は人が忘れがちになってしまうものの大切さを伝えたかったと思いました。なぜかというと時代が賢治の理想と違う方向へ進んでいたからです。やまなしのかにの成長や心情を読み取ることで賢治の理想であった人に優しさを育ててもらいたいという考えにつながると思ったからです。
<B児> 賢治の人生と「やまなし」の共通点を探すと、賢治が経験した多くの災害や暴れる自然は「やまなし」の中のかわせみで表現していると思います。そしてそのかわせみにおびえているかにたちを人にたとえ、農作物のめぐみはうれしい物だということを伝えたいのだと思いました。
<C児> 宮沢賢治さんは植物について考えていた人なので、題名のやまなしのように人や動物は植物を育て、食べることで行きていけるというつながりがこの「やまなし」で伝えたいことだと思いました。
<D児> 「やまなし」には賢治が伝えたい勇気や希望がつまっていることが「おいしい」「いいにおい」「おどるよう」という言葉からイメージできるので、「鉄砲だま」のような怖い存在よりも勇気や希望を大切にしたいと考え「やまなし」の題名にしたのではないかと思います。

 作者について学び、物語の世界観と結びつけるという学習ははじめての経験であったが、教科書の資料に加え、並行読書の図書室の宮沢賢治作品に書かれた考察や、コラム、作品分析を読んでいくうちにどんどん宮沢賢治の世界に引き込まれていった。また言語活動に入る前から、「風の又三郎では…」「注文の多い料理店では…」などと関連づけて考えている児童もいた。このあと並行読書をした宮沢賢治の作品をどのように読んでいくのかいまから楽しみである。
(彦根市立城南小)