秋の言葉と私
弓 削 裕 之

 5年生の国語で、好きな秋の季語を選び、その中の一つの言葉にまつわる思い出や好きな理由などを書く学習をした。言葉と子どもたちとのつながりが見えた活動だった。

●「紅葉」(他に選んだ季語…椎茸・松茸・茸・とんぼ・鈴虫・すすき)
 4、5才の時に、公園で見た大きなもみじを毎年の秋に思い出す。今は引っ越していなくなってしまった友達との思い出。

●「秋の蝶」(他に選んだ季語…月・秋風・秋の雷・稲妻・稲雀・鮭)
 学校の帰り道に家の近くで蝶を見つけた。その蝶は夏に見た時の蝶よりは弱々しかったが、自分が一生懸命生きるためにがんばっている姿が好きだった。

●「柚子」(他に選んだ季語…じゃがいも・さつまいも・椋鳥・きつつき・秋夕焼・秋晴)
 毎年、秋になると、真っ黄色のきれいな柚子が葉と葉の間から顔をのぞかせている。柚子のとげできずだらけになりながらも、手に乗らないほどの柚子をとる。

●「星月夜」(他に選んだ季語…秋彼岸・秋出水・月見・秋刀魚・ひぐらし・紅葉)
 いつも、嫌なことや不安なことがあった時、星月夜を見たら、そんなことが全てどこかにふっとんでいって、さっぱりした気持ちになります。

●「」(他に選んだ季語…晩秋・夜長・流星・露寒・秋の湖・紅葉)
 月を見ていると、昔の人も僕といっしょの月を見ていたんだなあって、言葉では何とも言えない不思議な気持ちになります。一人の女の子が、誰よりも小さな字でたくさん書いているのが見えた。私が近寄ると、紙を隠すようにしながらも、鉛筆を止めずに書き続けた。

●「墓参」(他に選んだ季語…金木犀・七夕・稲妻・盆・送り火・迎え火)
 2019年10月31日午前10時ごろ、おじいちゃんは他界したと聞く。その時、私はダラダラと授業を受講していたに違いない。おじいちゃんが他界し、家族がアタフタしている間に、私はこんなことを思っていただろう。「今日の昼ごはん何かな」とか「早く遊びたいな」とか、みんながアタフタしている時に思っていたのだ。我ながら情けない話である。他界したと聞いたのは、授業が全て終わった時だ。悲しかった。もっと早く行きたかった。けれど、おじいちゃんは私を、お兄ちゃんの勉強を優先した。おじいちゃんは私たちと会いたい気持ちを押しころした。優しい人だ。頑固だと思っていた。気難しいと思っていた。全て間違いだ。尊敬した。やっぱりおじいちゃんは、すばらしい人だ。

 「墓参」という秋の言葉をきっかけにして、今まで表に出していなかった思いが言葉になり、あふれたように感じた。
(京都女子大学附属小)