今、求められている力
西 條 陽 之

 新型コロナウイルス感染防止対策のため、これまでのようないわゆる話し合い活動に取り組みにくい状況にある。「山小屋で三日間すごすなら」(光村図書3上)は思考力、判断力、表現力等における「A話すこと・聞くこと」の指導を目的とした単元であるが、話し合いをどのように行えば良いだろうか。

 一つには、できないことばかりに注目しないことである。「向かい合って話し合いはできないけれど、どうしたらいいでしょうか。」と子どもたちに問うてみると、「横に並んだまま話せばいい」「(間隔を空けている)今の席から話し合えばいい」など、今の状況に合わせた“できること”をしっかりと見つけている。各校で感染防止や安全確保について、教師からはもちろん、委員会活動などの児童会活動でも注意喚起を積極的に行なっていることと思う。その上で、子どもたちと共にニューノーマルを考え、築いていくことが求められている。

 もう一つには、向かい合って話し合うことだけが対話ではないということだ。対話には、自分と友達、自分とみんな、自分と自分というように考えを広げ深めるための対象がいくつも存在すると考える。その中でも、自分自身との対話を深めるために、「書くこと」に重点を置きたい。私の学級では一人一枚のホワイトボードを用意している。B4の用紙にマス目を印刷して、ラミネート加工したもので、雑巾を4等分に切ってイレーザー替わりにしている。山小屋へ持っていきたい物を出し合う場面では、ホワイトボードに書いたものを黒板に貼っていき、必要性や理由を説明しながら考えを整理していった。友だちのホワイトボードを見ながら、同じ意見や似た意見など仲間分けをしていくことで、考えの自己対話を深めていくことができた。合意形成の場面でも、肯定的な意見が多いものからピラミッド状に並べていくことで大事なことを視覚的に捉えていった。

 今までの常識をリフレーミングしたり、教具を少し工夫したりすることで、変化に対応していく。子どもたちはまさに柔軟的発想を引き出す名人である。最終的な安全保障は大人の義務であるとして、この窮屈さの殻を打ち破るヒントは彼らの自由で伸び伸びとした姿にあるのだと思う。
(大津市立小野小)