「作家」で読もう
弓 削 裕 之

 子どもたちに本を選ぶきっかけとなること尋ねると、題名、表紙の絵、ジャンル、シリーズ、出版社、家族や友だちからのおすすめなど、人によって様々だった。「作家で広げるわたしたちの読書」(光村五年)では、作家に着目して本を紹介することをめあてに学習をした。

〈学習の流れ〉
@重松清『カレーライス』を読み、登場人物の関係や、心情表現の特徴などを確認する。
A重松清『バスに乗って』を読み、『カレーライス』との共通点を見つける。
B同じ作家が書いた二作品を選ぶ。
C選んだ二作品の共通点を見つけ、紹介カードに書く。

 @の学習は、「作家性」を見つけるいくつかの視点を示すねらいで設定した。Aの学習では、中心人物二人の関係の変化が似ていることや、気持ちを何かに例えて書いていること、「分かってる、それくらい」と「わかっている、そんなの」のようにそっくりな書きぶりであることなど、細かなところにまで目を向けていた。
 紹介カードには、それぞれの作品の紹介文と、見つけた二作品の共通点をキャッチコピーの形で表した。紹介文の内容として、「おもしろかったところ」「おすすめのポイント」など具体的に示したが、「親子読書郵便のように」という言葉がけをした時、子どもたちは一番納得した表情をしていた。「親子読書郵便」は、毎年読書週間に行っている、往復はがきに親へおすすめしたい本の紹介文を書き、返事をもらうという取り組みである。学びの継続と共通体験の大切さを改めて感じた。

《子どもたちが考えたキャッチコピー》
・「少年の勇気」 (『少年探偵団』と『怪奇四十面相』の江戸川乱歩)
・「読めば読むほどのめりこむ!」 (『闇の守り人』と『風と行く者』の上橋菜穂子)
・「人の命の大切さがわかります」 (『パンプキン』と『若おかみは小学生!』の令丈ヒロコ)
・「夢のような本です」 (『銀河鉄道の夜』と『注文の多い料理店』の宮沢賢治)
・「章ごとに視点が変わる」 (『温室デイズ』と『戸村飯店青春100連発』の瀬尾まいこ)
・「ブキミなゲームのような世界」 (『オンライン!』と『ウラオモテ世界』の雨蛙ミドリ)
・「独特の調査法、思いがけない真実に驚かされる本」 (『くちびるのねじれた男』と『赤毛軍団のひみつ』のコナン・ドイル)
・「驚くような終わり方の不思議な物語」 (『たくさんのタブー』と『ノックの音が』の星新一)

 二作品の共通点を言葉にすることが、その作家の「らしさ」を見つけることにつながり、また新しい読書の扉を開くきっかけになってくれればと思う。
(京都女子大学附属小)