自尊感情を高める俳句教室づくり
好 光 幹 雄

 滋賀県湖南市教育研究所主催教師力アップセミナーの報告、湖南市立岩根小学校にて(7月30日) 上のようなテーマでセミナーをさせていだきました。

@夏探し〜校庭へ出よう〜
 今日は、今の時期にしか見られないもの、今しか感動できないものを探しましょう。こう先生方に説明して校庭に出ました。見つけたものは、鳳仙花、朝顔、向日葵、青紅葉、木蓮の実と蕾(返り咲き)、蒲(がま)、萩の花、珊瑚樹の実、楠の青葉、桜の青葉、羽黒蜻蛉、夏の青空、雲の峰等。

A季語〜感動を凝縮した言葉〜
 会場の真ん中には季節の花と風物詩を飾ります。そして、今見てきたことを参考に夏の風物詩の言葉集めをしました。花なら、今校庭で見てきた花々。食べ物なら、西瓜、メロン、桃、かき氷、アイス等々。花火等。いつもしていることですが、その幾つかを取り上げ、その言葉にまつわるみんなの思いを交流し、更にその言葉の話や歴史や人々の生活の中での有り様について私が説明もします。(Y=好光、C=参加の先生方)
Y 氷ですが、皆さんは何をかけて食べられますか。
C 練乳・みぞれ・いちご・ブルーハワイ等。
Y ほら、同じ氷でもかけるものが違いますよね。今聞いただけで、その方の年代がわかるでしょ。 (一同笑い)ね。でも、夏に氷って、おかしいと思いませんか。どうして夏に氷が食べられるのですか。普通氷って夏のものですか。…はい、そうですね。氷室ですよね。昔は位の高い人しか食べられなかったのです。皇族とか貴族とかお殿様とか。悲しいかなお菓子にも貧富の差が出るんですよ。では、かき氷が庶民の味になったのはいつ頃からですか。…
C そうか。そういうことか。昔は高級品やったんや。
Y ですから、この「氷」という言葉の中にも歴史があり、そこから人々の生活の匂いが漂ってくるのです。さっきみぞれや練乳と言った先生と、ブルーハワイと言った先生と、同じ「氷」から湧き上がるイメージと感動は違うのです。同じ言葉の中にそれぞれの感動が凝縮されています。それを俳句の世界では「季語」と言います。みぞれと表現された先生の人生がそこに既に表現されているのですよ。その人の個性が出るわけです。子どもも同じです。それを互いに認め合うことで自尊感情が高まるのです。

Bはじめての俳句指導
 はじめての俳句指導という言葉には二つの意味があります。一つははじめて俳句を詠む子への指導方法。もう一つははじめて俳句指導をされる先生にとっての指導方法。残念ながらこれらについては紙面が限られているため割愛しますが、過去の好光のさざなみ国語教室の記事を参考していただけたら幸いです。ただ一つだけ大切にしていただきたいことは、子どもの作品は子どもの分身であるということ。誤字脱字以外は一切添削をしません。なぜなら俳句は一音一字変えるだけでガラッと作品が変わります。よかれと思ってする添削が実は子どもの自尊感情を深く傷つけます。つまり結局添削してもらわなければ自分の作品は駄目なのかという思いを子どもに抱かせるのです。指導と言いながら如何に教師は子どもを日々傷つけていることでしょうか。子どもの絵の上に教師が絵を描くでしょうか。テレビでしているような愚かな真似だけは、くれぐれもなさならないようにとお願いしました。

Cこどもの作品をステージに
 昔、町でばったり出会ったお母様が「好光先生、あの家の子が国語が好きなったと言ってます。おまけに字を書くのが好きになったと言ってます。」教師冥利に尽きる感動のお言葉でした。 (BCはホームページでどうぞ。)
(京都・立命館小学校常勤講師)