すべての子どもの学びの保障〜感染症対策との両立の中で
池 嵜 繁 伸

 「一人残らず全ての子どもの学ぶ権利を保障し、その学びの質を高めること」これが、河瀬小がめざす教育であり、その中心となっているのが校内研究なのだと、改めて強く感じている。

 昨年度異動してくる以前から、河瀬小では「学びの共同体を実践している」「全クラスがコの字に机を並べている」「四人一組のグループ学習を多く取り入れている」等の情報は知り得ていたが、これまでの勤務校で私が経験してきた校内研究とは異なり、そのちがいに戸惑うこともあった。「学びの共同体なのだから、○○でなければならない」等と、自分の考えに自ら縛りをかけてしまっていたことが戸惑いの一つの要因であったと考える。昨年度、本校の授業研究会に加わることを重ね、「最も大切なことは何か」と自問自答する中で、なぜ「コの字」なのか、なぜ「四人グループによる協同的学び」を中心に授業を組織するのか等が、実感を伴って徐々に一つに繋がってきたところであった。

 しかし、昨年度末からの新型コロナウイルス感染症の影響で、本校が長年取り組んできた「共に学び合う、聴き合う集団づくり」をめざす校内研究が、大きく揺らごうとしている。以前のような「コの字に机を並べること」や「四人一組のグループ学習」を行うこと自体が、感染症予防対策の観点から、難しい状況が続いている。感染症対策を講じつつ、協同的な学び合いによりすべての子どもの学びを保障するという課題に取り組んでいかなければならない。

 教室では、以前は当たり前だった、コの字に机を並べることをやめざるをえなかった。また、6月の学校再開当初は、グループやペアでの学習を極力行わず、学級全体での学び合いを充実させることに力を注いだ。教師が子どもの「分からなさ」に寄り添う姿勢を貫き、分らない子どもが「分からないから教えて」と言うことができ、その「分からなさ」を学級全員で考え合う、子ども主体の学習を目指した。そこで教師は、子ども主体の学び合いが円滑に進むようファシリテーターのような役割を担う。

 6月の学校再開から約1か月が経ち、年度当初の計画から大幅に遅れたが、ようやく第1回目の校内研究公開授業を実施することができた。四人一組のグループ学習も机をぴったりつけずロの字型で距離をとって行い、ペア学習でも対面にならないよう机の配置を工夫する等の対策をしてきた。

 研究授業は、2年生算数科「かさのたんい」。本時の目標は「LとdLの関係を理解し、かさの加減の計算ができる」である。

 主な学習活動の流れは、@めあてを確認する。A共有課題について全体で考える。B発展問題について考える。C全体で考えを交流する。D学習のふり返りをする。参観の観点として、「すべての子の学びが保障されていたか」「発展の問題は適切で、子どもたちが学び合えていたか」の2つが示されていた。

 共有課題「大きな水とうに水が1L5dL入っています。小さな水とうには3dL入っています。水は合わせて なんLなんdLですか。*計算の仕方を、図・式・言葉で説明しましょう。」の学習場面。各自が、図・式・文章で自分の考えをかく際、A児の「計算の仕方で迷ってる」というつぶやきから、子どもたちの学び合いが勢いづくのを感じた。ある子は「同じdLをたして、1Lはそのままにしておけばいいよ」と説明し、またある子は、1Lますと1dLますの図をもとに計算の仕方の説明を工夫することができた。指導者の子どもの「分からなさ」を大切にし、分からない子どもに寄り添いながら、子どもたちをつなごうとする姿勢が印象的な場面であった。

 今後の感染症対策と「すべての子どもの学びを保障する」本校の校内研究を両立していくことへの示唆とともに、この難局を乗り越える希望を見出すことのできた、今年度第1回目の授業公開であった。
(彦根市立河瀬小)