「変身俳句」で夏を詠む
弓 削 裕 之

 「日常を十七音で」(光村5上)では、できあがった俳句を見直し、よりよいものにする手立てについて記されている。見直して工夫を加えることを「変身」と呼び、「変身」の具体的な方法として、特に「@順序を入れ替える A気持ちや様子を何かにたとえる」の2点を示した。

●順序を入れ替えて変身
・空みあげ おじぞうさまも 花火見る → 花火見る おじぞうさまも 空みあげ
・もうとけた 二口三口 かき氷 → かき氷 二口三口 もうとけた

●気持ちを表す言葉を変身
・きもちいな 浜辺で日焼け いい日ざし → うつぶせで 背中を日焼け いい日ざし
・かきごおり 家に帰って 食べたいな → かきごおり 家に帰って 冷やしてる

●様子を表す言葉を変身
・ひまわりが とても大きく 咲いている → 笑ってる 太陽みたいな ひまわりが
・夏の風 むぎわら帽子を とばしてる → 夏帽子 やさしい風が はこんでる
・雨の後 きれいな虹が かかってる → 雨の後 きれいな虹の すべり台

 Aさんは、母の日のことを俳句にした。
  母の日に カーネーションを プレゼント
 どのように変身させようか悩んでいたので、Aさんはどんな気持ちだったのかを聞くと、
  楽しみだ カーネーションを プレゼント
と変身させた。Aさんが伝えたかったのは、カーネーションを渡すまでの出来事だということが分かった。「お母さんに渡すまで、カーネーションはどうしていたのですか」と尋ねると、「見つからないように、部屋に隠していました」と答えた。「その様子を俳句にしてみたらどうですか」と返すと、Aさんは次のように俳句を変身させた。
  こそこそと カーネーションを かくしてる
 お母さんにプレゼントを渡すまでのAさんの気持ちや様子が、とてもよく伝わってくる。その日のAさんの日記には、授業のことが綴られていた。
「3時間目に俳句を作りました。それを変身させて書くのに時間がものすごくかかってしまったけど、いい俳句になったのでうれしかったです。俳句を作るのが好きになりました。」
(京都女子大学附属小)