作文を書くための取材力
海 東 貴 利

 作文で最も重要なことは取材力であると考える。つまり、書く材料を見つける力、集める力である。 今年度、週に1時間程度の国語の指導時間をいただいた。指導する学年は2年生。この時間はおもに書くことに関する内容で書写や漢字の習熟、作文指導の時間にあてたいと計画した。

   先日、受け持つ学級で初めて国語の授業を行った。はじめにオリエンテーションを行った後、早速、生活文の作文を書く学習をした。テーマは「はじめての〇〇」。本時のめあては、ようすをよく思い出して書くこと。テーマとめあてを確認した後、「はじめての〇〇」の〇〇には、どんなことがあるか聞いてみた。一人で料理をしたことや家で野菜の種を植えたこと、逆上がりができるようになったことなど子どもたち一人一人が考える書きたいことは様々。この全体発表の場面では、子どもたちの書きたいことがより具体化するように児童が発表をしたあと、教師が質問したり感想を話したりして、じっくりと子どもたちとやりとりをした。
「へえー。それはいつのことなの?」「すごいね。だれとしたの?」「本当?。それはどんなふうになってるの?」と会話をしながら、そのときの様子をより具体的に思い出せるようにした。

 そして、さあ書こうとはじめると、あっという間に書き終えた児童がいた。しっかりとした丁寧な字でこんな文を書いていた。
『きのうの休み時間に、はじめて学校にあるのぼりぼうのいちばん上までいけました。手がいたかったです。』
 この時期、2年生の体育では固定遊具をつかった運動遊びをしていることもあり、休み時間も登り棒のてっぺんまで到達できるように熱心に練習していることが想像できた。書き終えた児童のそばで、手が痛くなっても達成できたことについて話した後、もっとくわしくその時の様子を思い浮かべてごらんと声をかけたが、何を書いたらよいのかわからない様子だった。そこで、もう少しこの児童と対話して、取材のお手伝いをすることにした。
 T てっぺんまで登った時、どんな景色が見えた?
 C う〜ん。何も(ない)。
 T 一緒に登り棒を登っていた友だちはいなかったの?
 C いたけど、てっぺんまで登れたのはぼくだけ。
 T なるほど。てっぺんまで登れたのは□□さんだけなんだ。
 T じゃ、てっぺんまで登ったとき、横を見たらだれもいなくて、登れたのは僕だけだったことも書くといいよ…。
 そんなやりとりをした後、児童はもう一度書き始め、次のような作文を書くことができた。
『きのうの休み時間に、はじめて学校にあるのぼりぼうのいちばん上までいけました。横を見ると、だれもいませんでした。下を見ると、友だちが手をふっていました。手がいたかったけど、うれしかったです。』

 次回の作文指導の導入で、この作文を取り上げるつもりでいる。推敲したことで、その時のようすがより鮮明にわかるだけでなく、うれしい気持ちもより実感できるようになったことを紹介したいと思っている。作文指導では1年間の指導の見通しをもち、「それなら書ける」「それなら書いてみたい」という題材に出合わせながら、作文を楽しんで書ける子を育てていきたい。
(高島市立安曇小)