想像力を養う物語創作の学習
三 上 昌 男

「これからの時代に求められる国語力について」(文化審議会答申2004年)において、「国語力の中核を成す領域を、『考える力』『感じる力』『想像する力』『表す力』の4つの力」としている。そして、その1つである『想像する力』について、「経験していない事柄や現実には存在していない事柄などをこうではないかと推し量り、頭の中でそのイメージを自由に思い描くことのできる力である。また、相手の表情や態度から、言葉に表れていない言外の思いを察することができるのも、この能力である。」と定義づけている。

「書くこと」の力の育成と「想像力」を高めることを総合的に扱った学習に「物語の創作」がある。 昨年度、2年と5年で物語を創作する学習を参観する機会があり、授業づくりの工夫について学ぶことができた。
 2年「お話のさくしゃになろう」では、絵を見て、経験したことや想像したことなどから書くことを決め、「はじめ」「中」「終わり」のまとまりのあるお話を書くことを目指されていた。5年「一まいの写真から」では、写真をもとに想像したことを、文章全体の構成の効果や表現の工夫を考えて物語を書くことに取り組まれた。
 想像がふくらむ絵や写真等を使って物語を構想することは、物語創作の楽しさや喜びを体験させることにつながる大事なポイントである。
 物語の創作学習で考えることとしては、主に次のような内容がある。
 *どんな物語を作りたいか。
 *いつのことか。
 *どこでのことか。
 *主人公は誰で、ほかに誰が登場するか。
 *どんな事件が起きるか。
 *はじめのうちはどんな様子か。
 *どのように解決するか。
 *どのような表現の工夫を考えるか。
 学年の発達段階や児童の実態に応じ、時、場所、登場人物、出来事などから考えを広げ、物語の場面展開がつながるように指導・支援に努めたい。

 新学習指導要領「書くこと」では、次のように示されている。
〇言語活動
ウ 簡単な物語をつくるなど、感じたことや想像したことを書く活動。(一・二年)
ウ 詩や物語をつくるなど、感じたことや想像したことを書く活動。(三・四年)
イ 短歌や俳句をつくるなど、感じたことや想像したことを書く活動。(五・六年)
 いずれも、感じたことや想像したことを書く言語活動を例示している。

 また、前の学習指導要領「書くこと」において、創作文の指導が重視されていたが、学習指導要領の『解説』では、次のように具体的に述べられている。
「作家の創作による物語は、主人公やその他の登場人物がそれぞれの役割をもっていること、フィクション(虚構)の世界が物語られていること、冒頭部に状況や登場人物が設定され、事件とその解決が繰り返され発端から結末へと至る事件展開によって構成されていることなどの特徴をもっている。」

 児童が物語を作る際には、このような特徴を参考にすることも考えられる。児童が「想像力」を働かせ、ストーリー展開のアイデアを生み出す上で役立つのは、教科書教材の物語例やこれまで読んできた物語である。物語の読み聞かせをしてもらったり、物語を読んだりした経験が、児童が想像を広げて創作していく際の基盤となる。
 物語創作の学習では、「読むこと」との関連を図り、物語の基本的な特徴を理解し、「書くこと」に取り組むようにすることが大切である。
(滋賀県総合教育センター)