近江の子ども俳句教室
西 條 陽 之

 2月2日、大津市生涯学習センターにて、「近江の子ども俳句教室」がNPO法人現代の教育問題研究所の主催で開催され、スタッフとして参加させていただいた。

 開会行事を終え、センター前の花壇の観察をしている時、好光先生は「自然とお友だちになる一番大切な方法は名前を覚えることです。」と子どもたちに話されていた。新しい春を前に、色とりどりに咲く花々を五感で感じることに加えて、知識として、あるいは語彙としてその花の名前を知るということの重要性を感じた瞬間であった。

 存在や現象を認知するということは、語彙の指導においても重要な視点ではないだろうか。「山よそおう」と聞いていつの季節か、想像できるだろうか。山々が赤黄色に着飾ったそんなおしゃれな季節だと知ったならば、「山よそおう」は自分の血肉となったと言えるだろう。自分の知識が完全でないことを知っているという「無知の知」は、ソクラテス哲学の基本であるが、知っているに越した事はない。

 子どもたちが、わからないから知りたい、表現したいから知りたいという好奇心を持てるか、知らないからできない、わからないという諦めの境地に立つか、教師としての指導力が試される局面だ。

 自然散策を終えて、季語についてのゲームを行った後、子どもたちは作品づくりを始めた。やはり、 子どもたちの吸収力や感性には毎回驚かされる。今日初めて知った言葉も見事にアウトプットしながら素晴らしい句を次から次へと生み出していく。スタッフは、添削(とは言っても、技術的な指導はほとんどなく、良い点を見つけて褒めていく)の巡回をしていく。

 大きな花丸をもらって嬉しそうな表情が印象的であった。また、俳句づくりを通して子どもたちと保 護者の方が語り合う姿がなんとも素晴らしかった。忙しなく過ぎる現代社会の中で、ふと足を止めて季節の喜びを見つけることは、豊かな情操を育むためにも大切な時間なのだと思う。
(大津市立小野小)