共に学び合う、聴き合う集団づくりをめざして
池 嵜 繁 伸
本校は、平成22年度から「学びの共同体」の理論をよりどころとして、主体的・協同的な学びを授業に取り入れて研究を重ねてきた。「共に学び合う聴き合う集団」をつくるための重点は次の3点である。 ○課題をどう設定し、どのように教材に向かわせるのか。 ○授業の中で「聴く」「つなぐ」「もどす」をいかに実践できるか。 ○授業の中にどれだけ多くのグループ学習を取り入れることができるか。 この3点を大切にして、教師は教室の中に学び合う関係を作り出すことを目的に授業研究を進めていく。学び合う雰囲気が醸成されてくれば、グループでの関わり方がわかってくる。グループでの関わりに学び合う雰囲気が生まれれば、個人での作業や学習への取り組み方も変わってくる。 子ども達に必要なのは、授業の中で学び合い聴き合う関係の心地よさ、高まり合える楽しさである。 このような授業をめざして、教師全員が研究授業を行う。管理職も例外ではなく、私も教頭として、卒業を前にした6年生の各クラスで1時間ずつ国語科の授業をさせていただいた。その概要は次のとおりである。 単元名『卒業への自分の考えを広げよう』 〔ねらい〕 卒業をテーマにした短歌や詩を読んでまとめた意見や感想を共有し、卒業についての自分の考えを広げることができる。 〔展開〕 (1) めあてを確認する。 「短歌や詩を読んで、卒業への自分の考えを広げよう。」 *一般的な「卒業」という言葉からイメージしていくのではなく、「自分たちの卒業」への考えを広げる学習であることを意識させる。 (2) 卒業をテーマにした短歌の作品例(6年生児童作)をもとに、意見や感想を共有する。 〇学校に来る日数があまりない だから[ ] 〇今日もまた近づいてくる卒業は [ ] *同じ小学6年生が詠んだ短歌の一部を伏せて、自分の今の思いとぴったりな言葉を考え、共有する。 (3) 卒業をテーマにした詩の作品例(6年生児童作)をもとに、意見や感想を共有する。 朝 またいつもの朝がきた 家を出て行き親に 「いってきます」と言うとき ふと思う。 このランドセルをせおって この時間にこの言葉を 言うのはあとたった わずかということを。 その思いは 最後の日は どれだけ強くなっているのだろう。 今思うのは [ ]ということだ。 *同じ小学6年生がつくった詩の一部を伏せて、自分の今の思いとぴったりな文を考え、共有する。 *詩の一部を考えることをとおして、卒業についての自分の考えを広げることが重要であることを意識させる。 (4) 学習の振り返りをする。 *卒業についての自分の考えを広げることができたかについて、振り返り文章でまとめる。 今回の授業を行うにあたって、主となる言語活動を「卒業式当日の自分へ手紙を書く」とする案も考えたが、最終的に書くことよりも聴き合う活動を重視することとした。 本時の振り返りでは、「みんなが考えた詩や短歌を聞いて、一人一人の思いが知れて、お互いわかり合えた気がする」「一日一日を大切に過ごして、もっとつながり、思い出を増やしたい」等の感想があった。 グループ交流で一瞬静まりかえり、子どもがつぶやき始め、友達に語り始めるまでの時間を辛抱強く待つことの大切さを改めて実感した授業であった。 (彦根市立河瀬小)
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