「ていねいに」
廣 瀬 久 忠

 新しい指導要領の目標にある「日常生活」とは何を指しているのですか。
 これが吉永幸司先生の我々全教員への問いである。
 「学校や家庭での改まった公の場」と答えるものあり、「朝起きてから眠るまで」と答えるものあり、「学校家庭地域での人やものとの関わり」と答えるものあり、「人との対話、情報の取り込み、説明書などの読み込み」と答えるものもありである。
 吉永幸司先生は「日常生活を授業」ととらえてみたらと話された。そうすると「日常生活」の意味合いが途端にくっきりとした輪郭を持つようになる。
@日常生活に必要な国語については、その特質を理解し、適切に使うことができる。
A日常生活における人との関わりの中で伝え合う力を高め、思考力や想像力を養う。
の目標が「授業に必要な国語については、その特質を理解し、適切に使うことができる」ようにすることだし、「授業における人との関わりの中で伝え合う力を高め、思考力や想像力を養う」ようにすることである。
 「では、そのような国語の授業をしていますか」が次の問い。なかなか顔があがらない。授業の中で発揮される国語の力を明確にとらえ指導してきたかを問われた。

 菩提寺北小学校が令和元年2年の2年間、国立教育政策研究所の教育課程研究指定校となり研究の窓口を「読むことの精査・解釈の力をつける」ために評価の仕方を考え、指導改善を図ろうと研究を進めている。
 吉永幸司先生には、11月8日に開催した中間発表会での全授業を参観いただいた。その上で、12月、1月、2月の仮説検証授業をご指導いただくと共に3学期が始まってすぐの1月9日、座学による「読むことと精査・解釈」についてご講話いただいた。

 読むことの構成は「構造と内容の把握」「精査・解釈」「考えの形成」「共有」からなる。
 では、「精査・解釈」とは。
 文章の内容や形式に着目して読み、目的に応じて必要な情報を見つけること。書かれていること、書かれていないことをについて、具体的に想像することである。
 説明的な文章では、低学年「文章の中の語や文」を見つける。中学年「中心となる語や文」を見つける。高学年「必要な情報」を見つける。「論の進め方」を考えることをさす。
 文学的な文章では、低学年「登場人物の行動」を具体的に想像する。中学年「登場人物の気持ちの変化や性格、情景」を具体的に想像する。高学年「人物像や物語の全体像」を具体的に想像する。「表現の効果」を考えることをさす。
 この2学年毎に示された指導内容を体系的に落とさず指導するために単元の配列と指導内容を焦点化させ意識的に指導ができるよう一覧表も作成した。子どもが言語活動をイメージできるようB評価となる学習モデルも示すよう準備し、指導を工夫した。

 吉永幸司先生からは「想像すること」をどう教えるかを丁寧にご指導いただいた。形や色や光など何を手がかりに読むとは。想像したことが言葉になるとは。多面的に読むとは。教材と子どもの出会わせ方とは。会話文の読み方とは。等々、12月、3年生が公開した「三年とうげ」を全教員が共通認識しているのでその冒頭を読みながら、具体的に「想像して」読むことを丁寧に教えていただいた。
 子どもが「想像して読むのはなぜ大切なのか」「想像して読むためには語彙を広げていかなければならないこと」を子どもが自覚できる指導が求められる。キーワードは「ていねいに」である。
(湖南市立菩提寺北小)