ごんぎつね あらすじを読む
西 條 陽 之

 「読み解く力」は主に文章や図、グラフから情報を読み解き理解する力と、相手の言葉や表情等から考えや意図を読み解き理解する力の二つの側面を持つもの、と県教育委員会では定義されている。さらに、「必要な情報を確かに取り出す」、「情報を比較し、関連付けて整理する」、「自分なりに解決し、知識を再構築する」という三つのプロセスがあると続けられている。

 ごんぎつね(新美南吉 光村図書)の授業をこの「読み解く力」の観点から考察する。物語のあらすじを捉えることを目標として、挿絵を手がかりにできごとを子どもたちと整理した。まずは物語の組み立てについて既知、既習の知識を生かして考察するために、起承転結という国語的用語について昔話の桃太郎や浦島太郎になぞらえて分析・整理を行った。幼いころから馴染みのある昔話。浦島太郎などは先日のふるさと体験学習で劇を披露したばかりであった。子どもたちからは口々にあらすじのキーワードが飛び出した。こうして、起承転結についての理解、物語の捉え方を再構築したところでごんぎつねについての読み解きを行った。「起は兵十と出会うところかな」「承はくりやまつたけをあげるところ?」「あれ?結なくない?」「うたれて終わっててそのあとどうなったのか書かれてない」と今ままでの経験と比較しながら構造の違いについて発見を共有することができた。

 次にデジタル教科書を活用して挿絵を大きく映し、それぞれの場面について考えを出し合っていった。ごんの表情を大きく映して「どんな気持ちなんだろう」と問うと、自ずと本文に立ち返り探し始める姿が見られた。必要な情報を確かに取り出すための有効な手立てなのだと感じた。挿絵には多くの発見が隠されている。葬列には誰が参加しているのか。兵十の暮らしぶり。青い煙という情景描写について。これまでに読んできたことや個々の経験が対話によって形作られ、兵十がなっていた縄のように物語への捉えがより合わされていく印象であった。対話が増える一方で板書はシンプルに、書くことはまた別の時間に設定することが適していると感じた。終末には、どんなきつねが何によってどうなった話なのかという型を用意して、この時間に得た自分なりの解釈を落とし込めるようにした。
(大津市立小野小)