物語の魅力を伝え合うために
北 川 雅 士

 10月の半ばから「大造じいさんとガン」の学習をはじめた。学習のゴールは「物語の魅力を紹介カードを伝え合おう」に設定して学習を進めている。導入では範読に続いて難解語句をチェックしながら一人読みをし、学習の手引きと「たいせつ」を確認してから初発の感想を書いて交流した。

 初発の感想を読んでいると以下のような感想が見られた。
「大造じいさんはこわい人だと思います。」
 この感想をきっかけに大造じいさんの人物像をとらえるところから学習を進めていくことにした。まず初発の感想であった「大造じいさんはこわい人だ」という感想を切り口に「大造じいさんはどのような人なのか」みんなで大造じいさんについて叙述をもとに情報を集めていく。
 「栗野岳のふうもとにすんでいる」「かりゅうどである」「こしひとつまがっていない」「がんじょうな手」「話し上手」「72歳」「残雪をいまいましく思っている」「さまざまな方法を考えている」「ガンを打つ」「最後は逃がした」「ひきょうなやりかたはいや」など個々にノートに書いたことをグループでホワイトボードに書いて共有した。

 次にわかりにくい部分を全体で確認した。特に「かりゅうど」とはどのような生活をしている人なのかを意味調べとともに調べてきた情報や、入手できる写真や資料をもとに確認した。その後改めて「大造じいさんはどのような人なのか」について理由とともにノートに書いて交流した。「大造じいさんはこわい人だ」と書いていた児童のノートを紹介する。

   「今日の学習をして大造じいさんはかりゅうどとして一生けんめいな人だと思いました。なぜならみんなでかりゅうどの仕事についてべん強してなぜガンを打つのかわかったからです。鳥を打つこわい人だと思っていたけど、それはかりゅうどの人が生きるためなんだとわかりました。」

   滋賀県がすすめる読み解く力のプロセスの入り口は、「必要な情報を確かに取り出す(発見・蓄積)」ところにある。「大造じいさんとガン」の学習を通じて、椋鳩十さんの物語の魅力を伝え合うには、まずは全員が「大造じいさんとガンの物語の内容をきちんと理解している」という土台が必要不可欠だと感じている。この実践では、この時間の後にも難解語句をみんなで確認する時間を設けた。最近他の先生からも「意味調べをどうさせるか」「言葉の意味の理解に時間がかかってしまう」という相談をよくされる。読み解く力を身につけるために全員が必要な情報を取り出して学習に入るためには、言葉の意味調べや難解語句の確認の方法について今一度進め方を見直さなくてはいけないと感じた導入になった。
(彦根市立城南小)