心にのこっている物語文
弓 削 裕 之

 「お話のさくしゃになろう」(光村二下)の導入で、これまでに教科書で読んだ物語文をノートに書き出す活動をした。創作する前に、「物語」とはどのような文章かを確認するためだ。子どもたちは、思いついた物語からどんどん発表していった。中には、「たんぽぽのちえ」「どうぶつ園のじゅうい」などもあがり、「たしかにお話のように書かれていますね」と書きぶりの特徴に触れた上で、説明文であることを再確認した。題名とともに、代表的な登場人物もあわせて発表し、表として板書にまとめた。人物を書き出すことで、人以外のものも登場人物になっていることに気づいた。自分が忘れていたお話の題名を友だちが発表した時、「ああ~」と声が漏れ、「エルフが出てきた話だ」「くまさんが花のたねを落とすんだよね」などと作品の内容を懐かしそうにつぶやき合う姿が印象的だった。黒 板のはしからはしまで埋まり、その時間は終わった。子どもたちの中に、たくさんの物語を思い出すことが出来た達成感があった。

 次の時間が始まる前、Aさんが、「先生、ゆうやけもあります」とわたしにそっと教えてくれた。Aさんの中で一番心にのこっていたのが「ゆうやけ」(光村一上)だったという。2時間目の初め、表に「ゆうやけ」と「きつねさん」を書き足した後、一番心にのこっている物語文を一つ選んでその理由を書いた。「心にのこっているという言葉はわかりにくいですか」と尋ねると、子どもたちは「それでわかります」とすぐに鉛筆を動かし始めた。

●さいごのゆうやけをみるところがとてもうれしそうだったからです。
 Aさんは、「ゆうやけ」を選んだ理由をこのように綴っていた。Aさんの隣に座っているBさんも、「ゆうやけ」が加わった時にうれしそうな様子だったので、理由を読んでみた。
●今いもうとがべんきょうをしているりゆうもあるし、いいお話だからです。
 Bさんの妹は一年生。妹が今「ゆうやけ」を勉強していることを、お兄ちゃんが知っているというのがうれしい。
●エルフがさいごにしんでかなしいからです。
 「ずうっと、ずっと、大すきだよ」(光村一下)を選んだ子が書いた理由である。悲しい気持ちも、心にのこる理由になっていることがわかった。お話のどんなところが心にのこっているかを知ることは、自分がお話を書く際のヒントになることを伝えた。

 現在、子どもたちは、教科書の絵を参考にしてオリジナルのキャラクターを創作し、命を吹き込んでいる。どんな物語が生まれるのか、ただただ、楽しみである。
(京都女子大学附属小)