▼2から3歳くらいの子が電車に乗ってきた。空いていた席があった。席に座るとその子はお母さんに手を出した。お母さんがスマホを手渡すとすぐに親指で操作を始めた。慣れた様子で動画の漫画を真剣に見ている。お母さんも自分のスマホを見ている。母と子の会話はない。

▼電車の中なので声を出したり泣かれたりすると迷惑がかかるという気づかいからであろうが、母と子が目を合わさない、スマホに心が向いていることが気になる。

▼国語力の原点は心を言葉で伝えることである。目で心を伝えることが母と子の間ではできる。教室では、担任の先生の温もり、豊かさを表す言葉が大切である。始まりは敬称で名前を呼ぶこと。「おまえ」と呼び合う、それが平気な雰囲気の教室は、言葉が粗く豊かさが希薄である。スマホから受ける印象とそれほど大きな違いはなし。

▼教室が不安定になってきたとき、スマホ時代の子どもを念頭に置き、話し言葉に気づかうと解決の道筋が見える。「一度に受け止められだけの話をする・話の癖に気づく・視覚的な支援を生かして伝える・操作や動作がイメージできる話をする・実態を見て大事なことはやり直す・繰り返す・復唱させて言葉の力を伸ばす」等々。

▼言語環境のを整えるうえで役に立つ素材は多い。(吉永幸司)