学校を改革する U
廣 瀬 久 忠

 「夏休みの宿題がかわる」ことを6月の全校集会で話した。「43日間の長い休みだからできる課題を追究し、その結果をまとめ表現すること」がその中心。自分が日頃から興味を持っていて「知りたい、分かりたい。とことんやり抜きたい」課題を決め。その課題は普段の学校に通っているときにその日の宿題で解決できるような内容は指さない。長い夏休みに何日かを費やして教科書を読んだり、副読本や資料集を読んだり、調べたりし、他の本を調べたり、図書館に行ったり、インターネットで調べたり、その道の専門家に取材したり、関係のあるところへ出かけたり、困ったときに先生や周りの人に尋ねたりして課題追究する。夏ならではの学習として生き物の観察をとことんしたい子どもがいる。その生き物の生態をとことん観察していくうちにどんどんはてなが生まれる。はてながどんどんあふれる。そのはてなをどうしたら解決できるのかを考えることは低学年でもできる。野菜を育てた低学年の子どもは他の野菜にも興味が生まれる。畑のことなら何でも詳しい畑のプロに向かうチャンスである。野菜のことを考えているうちに、天候のこと。野菜につく害虫のこと。野菜の病気のこと。土つくりのこと。肥料のこと。化学肥料のこと。有機肥料のこと。環境こだわり農業のこと。土地の中の生き物のこと。やがて…食べると言うこと。命と言うこと。生きると言うこと。晴耕雨読と言うこと。おばあちゃんの知恵袋ということ。と、課題がどんどん更新していく。この学びの世界にはまるとどんどん学びへの意欲が高まりきりがない。しかし、学びの楽しさをつかんだ子どもは更に前向きに学ぼうとする。

 追究する方法を夏休みに入るまでに先生と相談し、まとめ方も相談する。つまり課題追究する「課題・解決方法・まとめ方」の計画をしっかり整えて夏休みに入る。

 だから全員同じ課題ではない。自分の決めた課題で、課題・解決方法・まとめ方の量も質も子ども一人ひとりが決める。自分の課題解決意欲により「大変だけど、やりきる」子どもをこの夏休みに育てたい。この社会がかつてのように「レールの上を走る人」が求められる状況から今や「自分でレールを敷設する人」が求められている。「言われたことをこなすと幸せになれる」「知識をたくさん持っていると幸せになれる」「まわりと同じことをしていれば幸せになれる」時代は遠い昔に終わってしまった。今ある職業の半数は子どもの未来にはAIにとってかわられるのは自明の理。取って代わられた仕事をしていた人が新たにうまれる仕事に就ける確率は低いと学者は予測している。AIにできないのは何か。AIの時代に人が人としてのしあわせを追究できる体力と知力をつけなければならない時代。「誰々さんがしているから…」「目立つ杭は打たれるから…」の発想では子どもの将来の幸せは約束されにくい。

 この新しい時代の子どもたちに必要な力は、「この社会にあふれている情報を様々な媒体から集め、必要な情報を分析し、自己解決すべき課題に向かう。課題解決の成果を誰にどのような方法で伝えるか選択し、理解を得る努力をする」ことだ。夏休みの宿題のメインをこのようにシフトするのはこの社会の流れに生きて働く力を育てたいと考えているからだ。共通の宿題は5つ。@課題追究研究、A読書、B生活表、C体力作り、D家での仕事。あとは選択。どんどんやればいい。
(湖南市立菩提寺北小)