師弟問答から自問自答へ
谷 口 映 介

 新学習指導要領での「主体的、対話的で深い学び」を成立させる上で、大切にしたいことに次の3つのサイクルが挙げられる。少し長くなるが引用したい。
【みつける】
 子どもが興味・関心のもてるものを見付ける。見付けたものを理解するためにもがき、そのもがく過程で、考えや解釈をつくり出して、他の子どもや先生とそれらを共有する。
【わかる】
 考え学ぶことの満足感、達成感を味わうことで、さらにもっと知ろうとする好奇心や知的欲求をもつ。そのことについての自分の考えや解釈をさらに推し進め、それを友達や先生と共有して、知的な有能感・効力感を増す。
【ひろがる/ふかまる】
 自分の考えや解釈をもとにして新しい知識をつくり出し、それを友達や先生と共有する。そのテーマをさらに深く掘り下げたり、気付いていなかったり曖昧にしていた面までも理解しようとする。

 【わかる】段階では、「質問する」「関連付ける」「推測する」「イメージを描く」「大切なところを見極める」「解釈する」「修正しながら意味をとらえる」という七つの方法も紹介されている。(同書p.15)注目したいのは、「質問する」という大切さである。これは、【みつける】段階でも大きく作用する。今までは、教師と児童(生徒)の関係は、所謂「師弟問答」ではなかったか。つまり、教師が問い、子どもが答えるという関係性である。問うー問われる関係性が終始続くのは本当に主体的な学びに繋がるのであろうか。

 古くは、青木幹勇氏(1965)が『問題をもちながら読む』(明治図書出版)の中で「教師の専有であった発問権を子どもたちに分譲」することを提案している。無論、教師の発問を否定するものではない。子どもが発問者となるとき、子どもの範例として教師の発問は一層重要になるという意味でも述べられている。強調されているのは、子どもの素朴な疑問や意欲・関心を取り上げることの重要性である。これは、今でも、いや今だからこそ重要な示唆を与えている。師弟問答から、自問自答する子ども達を育てていきたい。解決する道筋・計画・方法を自ら考え、自分に身に付いた力を自覚できる力が「アクティブ・ラーニング」に直結するのである。
(滋賀大学教育学部附属小)