問い方を考える
勝 矢 真 一 郎

 本年度は、久々の2年生を担任することになった。2年生で印象的な教材と言えば、「スーホの白い馬」である。今回はスーホの白い馬を例に挙げながら、問い方について考えたい。

 教科書教材「スーホの白い馬」について、2つの発問がある。
  A「スーホはどんな生活をしていますか?」
  B「スーホは何時間働いているだろうか?」


 スーホの生活環境や人物像を読み取らせたい場合、どちらの問い方が有効であるだろうか。「音・色・数・距離などゆれの無いもので問うこと、具体的に問うことで、子どもの思考を活性化させられるということ」を知り、以前2年生をもったとき、Bの発問を用いた。この発問をしたあと、子どもたちが、何度も何度も教科書を読み直し「ああでもない、こうでもない」と議論していたことが今でも記憶に残っている。子どもたちは「スーホは何時間働いているか」への答えを出すために、叙述をもとに物語の世界に入り込んでいた。「羊ってどうやって動かすの」「朝は何時に起きないとだめなのかな」「そもそも電気ってあるのかな」「電気がないと、ご飯をつくるのに時間かかるね」「自分たちと変わらない少年がこんなにたくさん仕事をしているの!?」「図書室に行ってモンゴルについて調べてみたい」など、様々な疑問や発見や驚きが生まれ、スーホに感情移入する子や、人物像を自分なりに捉え始めている子の姿が見られた。大切なことは「何時間働いているのか答えを出すこと」ではなく、「そのために、本文を何度も読み、考え、想像すること」にある。

 冒頭のAのような問い方をしても、子どもたちは教科書を読み、答えてくれるであろうが、想像力を豊かにはたらかせることはできるだろうか。ごんぎつねにおいても、「ごんの気持ちを考えよう」より、場合によっては「ごんと兵十の距離は何メートルか」という具体的な問い方の方が有効な場合もある。

 このように、問い方をBのように変えてみることで子どもたちの思考は活性化し、より深くお話の世界に浸り、想像しながら読み取っていくことだろう。「どのように問うか」ということは、「想像すること」を指導事項に掲げる読みの学習では非常に大切である。また、このような問いは、単元の流れの中、一授業の流れの中で、子どもたちの思考過程に沿い、ねらいをもってなされることで効果を高めるものであり、単発的・刹那的に行われるべきではない。そのため、指導者自身の深い教材理解、子どもたちの学びを見取る児童理解、単元の目的に向かってその問いがどのような役割をもつのかという単元理解などが求められてくるだろう。今年度も子どもたちに問うてみたい。「スーホは何時間はたらいているだろうか?」と。
(甲賀市立伴谷東小)