じどう車がすき
弓 削 裕 之

 学校は「嫌い」をつくってはいけない。吉永先生からこの言葉を聞いて、はっとさせられたことがある。「どうして漢字なんてあるの」「計算は苦手です」「跳び箱やりたくない」そんな言葉を耳にしながら、子どもたちの「好き」を増やしてあげられたらと思い教壇に立ってきた。

 『じどう車くらべ』(光村1下)のまとめで、単元全体の学習を振りかえって感想を書く時間を設けた。A児の感想に、「わたしは、じどう車がきらいでした」と書かれていて驚いた。しかしその後には、「でもじどう車カードをかいたらとてもじどう車がすきになりました」と続いている。今では「じどう車のことをいもうとにたくさんおしえてあげたい」と言う。
 この単元では、「じどう車カード」を書くことをめあてに学習がスタートした。まずは教材文に色分けして線を引き、それぞれの車の「しごと」と「つくり」を見つけた。そして、例えば「大きなまどがたくさん」とはどういうことかを考えるために、文と挿絵を照らし合わせた。「たくさん」という言葉に注目して、バスにある全ての窓に印をつけている子がいて、言葉の学びが深まった。

 教材文を使った学習をもとにして、今度は図鑑から「しごと」と「つくり」を探し出し、教材文に倣った文づくりに挑戦した。「先生、それはしごとじゃなくてつくりじゃないんですか」そんな疑問が出て立ち止まる度に、何度も教材文に返ってみんなで考えた。
 「まだカードを書かないんですか」と、なかなかゴールにたどりつかないことをもどかしく感じる時もあったが、投げ出す子は一人もいなかった。A児は感想に、「じどう車のしごととつくりをいっぱいはっけんしてじどう車はかせになるかもしれません」と書いている。そのために、「しごととつくりという二つのことばを忘れないようにがんばっている」と。

 満を持して書いた「じどう車カード」に、パトロールカーを選んで書いた子がいた。
 「パトロールカーは、じけんやじこをかいけつするときにやくにたつしごとをしています。そのために、せきしょくとうがたかくもち上がるしゅるいもあります。一だい一だいくべつするために、やねに大きな文字がかいてあります。」
 そう分かりやすく書かれた説明文の上には、高く持ち上がった赤色灯と、大きな文字を拡大した絵が描かれていた。クラスの友だちが一生懸命丁寧に仕上げた「じどう車カード」。それぞれの仕事に合ったつくりを持つ自動車たちに興味を持ったのか、A児は「いろいろなじどう車をかんさつしてみたい」と書いた。また、どうして自動車には番号がついているのかと、さっそく「はかせ」として調べてみたいことを感想の中でつぶやいていた。

 まとめの感想を書いた次の時間。A児の感想の最後がクラスのみんなへの問いかけで終わっていたので、私から紹介した。
「みなさんは、じどう車がすきですか。」
 みんなからの「はい」という大きな返事で、本単元はゴールした。
(京都女子大附属小)