意図のある言葉は綻びない
杉 澤 周 一

 来る春に実践現場を退く。弾んでいた子どもたちを思い浮かべつつ、30年あまりで得た実感から、やってみてはと本校やその他で話していることが幾らかある。
 このような前ぶりで去る7月に、ここでお伝えしたが、以下はその第2回。お役に立てるかどうか。

 意図をもって目標と実態に照らし授業を構想し工夫していた。年間や単元の目標を達成したい、目の前の実態を何とかしたいという願いが意図をもたせたのだろう。

【例1 話すこと(説明) 2年】
 わかりやすく話すことについて関心を持たせ、その話し方を身につける学習の契機にしたい。○○ごっこ遊びに終わらず、実生活場面に生きる学びをさせたい意図。そのために、前半は教科書教材の地図を利用して、行き先をわかりやすく伝える基本的な話術を教え、後半は実生活場面である学校か校区を利用して、誰かを案内する体験的学習にする。

【例2 読むこと・物語文 4年】
 物語学習における感想の書き方や読む視点を重点的に教える必要があるという実態をとらえた意図。
 (1) 読む観点(感想を書く観点)を提示し箇条書きで書かせる。(・ごんについて3つ以上 ・兵十について3つ以上 ・変化について気づいたこと)
 (2) 全員の感想を観点ごとにまとめた一覧プリントを作り、それに線を引かせ、自分以外の読み取りに自ら向き合うようにする。(線:青線…自分と同じ。赤線…気づかなかった、なるほど。 緑線…質問したい話し合いたい。)
 (3) もう一度、初発の感想を文章で書かせる。(実態に応じて箇条書きを増やす、修正する。)

【例3 説明文 3・4年】
 知的好奇心を育てる。新しく知ることの喜び、よさ、楽しさ、おもしろさ、未知なるものや科学的なもの、合理的なもの等に対する興味、疑問、すばらしいものに対する感動、憧れ、畏敬、へえー、なるほど…、ふーん、なぜ、もっと知りたい、を引き出したい意図。
これらの知的好奇心の耕しを教科書でやって、単元末に自分で選んだ本で学びを生かして自力で読 ませ、感想や紹介などをまとめさせる。今後の好奇心につなぐ意図。
 そのために「へえーベスト3」「なるほどベスト3」を理由・根拠、感想で書きまとめる出口に。

【例4 物語文 4年】
 初発と終末の感想を比べさせ、広がる深まること(増える 詳しくなる 変わる 少し変わる…)を自覚させたい意図。
 そのため、交流学習でノートに他の人の考え・思いを青鉛筆で、お取り寄せをした後、もう一度、考える学習を繰り返す。心情の変化を読み取り、書きまとめる。話せる。そのため、物語の展開と主人公の心情が一目でわかる1枚の紙にまとめさせる。

【年間を見通した意図の一例】
 物語の学習は、1学期は個々が精読できるように、2学期は1学期の個々の精読した学習を活かし話し合いで、さらに練り読み深め、3学期は自力で読み深めたり交流したりしながら豊かな読みができるようにしたい。その後に他の物語を読ませて1年間の学びを生かした自分なりの感想を豊かにまとめる力をつけたい意図。
 そのために、1学期は、読みの観点をを与え多様に感想を持てること、場面ごとに言葉に立ち止まりながら精読できることを重点にする。本文に線を引いたりノートに書いたりしながら読みを深めさせたい。それにつなぎ2学期は…。

 このように意図をもち、それに応じて授業の工夫をし、動機づけ、関心・意欲・態度を維持させ展開してきた。意図は、目標や見通し、実態を捉えてこそ生まれ、それにより目指す子どもの姿を浮べる。学習過程で、その姿に向かっているかを見取り評価しながら進めることになる。授業者が、単元目標と年間計画、学年系統、そして実態に照らして意図をもつと、構想、工夫、見取り・評価はより確かになり、授業は綻びにくくなる。子どもたちは弾んで学び合いながら力をつけ、授業者は、授業が見え、その手応えを実感しつつ、力量を積み重ねるように思われる。
(東近江市立八日市西小)