1月の教室から
西 條 陽 之

  さざなみや志賀の都は荒れにしを昔ながらの山桜かな  新学習指導要領移行における教育課程の研究協議会や伝達講習が行われている。授業改善の第一ステップは児童の実態をして、どのような力を付けたいか構想するということだという。それは何も新たな潮流ということではない。昔ながらに繰り返されてきた実践の中にも重点として置かれていたことである。まだまだ、研鑽の足りない自分であるから、2019年も長等山を望みながら、あれにしようこれにしようと子どもたちが花咲くように努めたい。

 さて、11月の寄稿では石垣りんの『空をかついで』の教材研究について述べさせていただいた。今回はそこで学んだ教材へのアプローチを生かして、木村信子の『未知へ』の実践報告をさせていただく。
 まずは、読むことの領域について、児童の実態を考える。これまで読むことの学習を通して、学級の子どもたちは、言葉の背景や喩えられている事柄を導き出すことにつまずきが見られた。言葉のままに捉える傾向があった。そこで、『未知へ』で使われている言葉を別の言葉に言い換えることを通して、詩に描かれていることやメッセージ性に迫りたいと考えた。
 次に教材観であるが、教材研究の中で、繰り返し読み解いている中で、やはり、児童が今置かれている状況〜卒業、旅立ち、新たなステージ〜に照らし合わせて味わうことを重点とした。具体的には、「殻」、「春」、「山」がそれぞれ何を意味しているのかについて、思考を巡らせ、自分との重なりが見つけられるように計画した。
その後、付けたい力をもとに指導事項を考えの形成「オ 文章を読んで理解したことに基づいて、自分の考えをまとめること」に設定した。

 以下、授業展開案。
@音読する。読めていることの確認をするため、連れ読みや男女別などで繰り返し音読。
Aノートに詩を視写する。言葉一つ一つに着目して書くようにする。
Bわたしとは誰で、どんな状況にあるのか考える。自分と重ねるための視点を明らかにする。
C「今の自分」と重なるところや考えを文章に書く。

 授業の実際では、児童観で述べていた通り、詩の中の「わたし」が誰なのかという発問に対して、カエルや鳥といった言葉からそのまま導き出す考えが多くを占めていた。これでは共感も湧きにくい。そこで、自分との重なりを意識するために、「殻」の状況を図で示し、内側と外側のイメージを共有していった。そうすることによって、「わたし」を具体から抽象へと昇華させることにつながった。このステップがあることで、「春」や「山」についても自分たちの置かれた状況と照らし合わせながら、中学校生活や待ち受けている試練に置き換えて考えることができた。
 研究協議会では、語彙を豊かにする事項についても強く語られていた。言葉に着目するアンテナをわたし自身も張りながら国語の魅力を伝えていきたいものだ。
(大津市立小野小)