思い浮かんだ言葉
弓 削 裕 之

 「先生、できました。」
 感想を書き終わった子が、手を挙げる。では読書をして待ちましょう、とは言わずに、
「時間がくるまで、言葉を足しましょう。」
と声をかける。すると、それまですらすらと書いていた子の手が止まり、考える顔になる。一文字、二文字…一行、二行…、言葉が増えていく。「できた」の先に生まれる言葉たちは、どこか原石のようである。
 『ずうっと、ずっと、大すきだよ』(光村一下)の一時間目。教師の読み語りを聞き、音読をした。子どもたちがいろいろとつぶやいている。ため息をついている子も。今、この瞬間の気持ちを言葉で表せたら。めあてには、「よんだかんそうをかこう」と書かずに、「おもいうかんだことばをかこう」と書いた。子どもたちの頭にクエスチョンマークが浮かぶ。「感想」という言葉に慣れてきた子どもたちに、揺さぶりをかける。
「今、読み終わって頭の中にある言葉をノートに書きましょう。自分で考えた言葉でも、お話の中にある言葉でもどちらでもかまいません。どのように書いてもいいですが、絵などではなく、言葉で書きましょう。」

● なかよし ふしぎなきもち なみだをのむ さみしい かなしい こころがいたむ だいじな犬 みんな大すき いつもいっしょ ともだち、
● エルフずっと大すきだよ。エルフのことしんぱい。エルフ大じょうぶ?エルフぜったいにわすれない。エルフずうっと一しょだよ。じゅういさんどうですか。エルフどうしたの?エルフかわいそう。エルフゆっくり休んでね。エルフきみは、かしこいんだよ。
● エルフは、やさしいな。エルフは、にんきものだな。エルフのおなかは、あったかいんだな。エルフのゆめは、どんなゆめかな。
● エルフ大すきだよ。エルフのことはぜったいわすれないよ。エルフのえがおはいつまでもわすれないよ。ありがとう。いつもいつもあいしているからね。
● なくなったのはさみしいけれど、ずうっとずっと大すきなきもちだよ、わたしも。わたしがもしかったら、まい日だいてあげるしずっと、ずっと大すきだよっていってあげる。まい日ぜったいにいってあげるよ。
● エルフがしんじゃってかなしかったです。わたしもきんぎょをかっているので、ずうっとずうっと大すきだよ。っていってあげたいです。

 つぶやいたり、語りかけたり、自分と重ねたりしながら、子どもたちは鉛筆を動かしていた。「あるあさ、目をさますと、エルフがしんでいた。よるのあいだにしんだんだ。ぼくたちは、エルフをにわにうめた。みんなないてかたをだきあった。」と、エルフが死んだ場面を丁寧に書き写している子が一人いた。いつもは感想を書く手が止まっている子。どのような心の動きがあったのだろう。次の時間が楽しみだ。
(京都女子大学附属小)